原子力機構・大洗センター 作業員被ばく 作業手順に疑問
プルトニウム長く肺に付着 専門家も「検証が必要」
日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター(茨城県大洗町)で放射性物質の点検作業中に作業員ら5人が放射性物質プルトニウム239などで被ばくした事故。専門家は作業手順がどうだったか、疑問を呈しています。
6月7日の原子力規制委員会の定例会合でもこの問題が報告され、規制委の伴信彦委員はプルトニウムなどは吸引汚染を起こさないことが常識。作業手順がどこまで妥当だったのか、厳しくみる必要がある」と指摘しました。
事故は6月6日、同センターの燃料研究棟で、核燃料に用いる、粉末状のプルトニウムとウランの酸化物が入った金属容器の点検作業中に起きました。
飛散防止のためのガラスで部分的に仕切られた箱(フード)の中で、容器を収めた外側のビニール製バッグが破裂したといいます。20代~50代の作業員ら5人の手足や耳などに放射性物質が付着しました。作業員は半面マスクを着用していたといいます。
機構は6月6日夜の時点で、うち3人が放射性物質を吸引し、鼻腔(びこう)内に最大で24ベクレルの放射性物質を検出したとしていました。その後の検査で、1人の肺からプルトニウム239が2万2000ベクレル、アメリシウム241が220ベクレル検出されました。
放射性防護学が専門の日本大学准教授の野口邦和さんは「最初の1年間で1・2シーベルトとされた男性の被ばく量は全身に換算すれば1年目で約150ミリシーベルトになり、作業員の被ばく限度を超える法令違反の状態です。プルトニウムなどは肺に付着し、一部は血液に入りますが、多くは長期間付着し続けます」と指摘した上で、「フード内の作業で、しかも半面マスクを着けていたのに、あまりにも高線量の被ばくです。作業環境が発表通りなのか、検証する必要があります」と指摘しています。
《プルトニウム239》・・・核分裂性のプルトニウムで、原爆の材料にもなります。半減期は約2万4000年で、アルファ線を放出しウラン235になります。アルファ線核種は体内に取り込まれると、組織に大きなダメージを与えます。プルトニウム239は肺に吸引された場合、長くとどまり強い発がん性が認められています。
(「しんぶん赤旗」2017年6月8日付より転載)