関東地方の早場米の稲刈りが本格化していますが、農家の表情は沈みがちです。
米価が暴落し、「これでは米作りを続けられない」と語ります。
農業・農村の”所得倍増”を掲げる安倍内閣。
「安倍首相は、いうこととやることが違う」と農家は批判します。(中沢睦夫)
生産費の半値、労賃も出ない
茨城県の県南地域は、利根川の流域に広がる水田地帯です。
農事組合法人「県南筑波農産センター」が、新米の品質検査をしました。
減農薬・減化学肥料の特別栽培米です。高温障害とカメムシ被害はあったものの、1等米がほとんどでした。
話題となるのは、今年産米の生産者価格の低さです。
4ヘクタールの稲作農家の男性(65)=取手市=は、「これではますます後継者がでない。私の集落では100戸ぐらいの農家のうち1人だけ。やる気がなくなる。棚田は小さい農家が守ってきたが、できなくなる」と心配します。
生産者手取り米価の目安となるのは、農協「概算金」です。
暴落相場のなかで2年連続、米価が下がっています。
農民連の産直組織のまとめでは、全国34産地・銘柄の平均は、玄米60キロで8,975円となっています。
茨城県の場合、前年に比べて2,500円ほど下がり、あきたこまちが60キロ7,800円、コシヒカリが9,000円と、1万円を割り込んでいます。
農家が他産業並みの労賃を得て稲作を続けるためのコストは、農水省の調査で約1万6,000円必要で、茨城県は生産費の半分程度です。
生産費のなかで労働費が約3割を占めます(グラフ)。
“1万円割れ米価”では、労賃はおろか物財費も出ません。
「これでは米を作ってもおもしろみがない。農機具なども買わない。地域の景気もますます悪くなる」。
50年以上も米作りをしてきたという男性(76)=河内町=は、暴落価格の悪影響を指摘しました。
見通しつかぬ
“若手”の男性(45)=龍ケ崎市=は、10ヘクタールあまりの水田を経営します。
後継者がいない農家から毎年、引き受けてほしいとの依頼を受けるといいます。
しかし、経営拡大することにためらいがあります。
「こんなに安くては先の見通しがつかない。規模拡大には大型機械が必要だ。いま借金をして設備投資はできない。この低価格では、やる気がおきない」
この男性は、アイガモ農法による有機米も作っています。
「手間はかかるけど、高く売れる。収量より品質でやったほうがいいのか。それとも収入がはっきりしている飼料米や加工用米をやったほうがいいのか。迷っている」と語ります。
安倍内閣は「成長戦略」だとして、“農業・農村の所得倍増”を掲げています。
「倍増なんて。まったく逆だ」とあきれ顔の男性。
「国は、農家つぶしに入っているのではないか」といいます。
米の検査員を務めた茨城農民連の村田深事務局長は、「農家は『所得倍増どころか、赤字倍増ではないか』と怒っている。政治を変えないと、ますます作り手がいなくなる」と話しました。
(「しんぶん赤旗」 2014年9月9日付より転載)