スケボー場残して 若者たちの挑戦 茨城・つくば市

茨城県つくば市で、公園内にあるスケートボード場の撤去をめぐって、行政と地元自治会、近隣住民や公園利用者らが模索を続けています。
日本共産党の山中たい子元県議や市議団も、「新たな街づくりを進める契機になれば」と話し合いを提唱しています。事態の経緯を見ました。

(青野圭)

価値ある施設守りたい

茨城県つくば市

茨城県つくば市


問題のスケートボード場は、白畑児童公園内(つくば市二の宮)にあります。
1979年、住宅・都市整備公団(現・都市再生機構=UR)がローラースケート場として設置。
現在、公園は街区公園*として市が管理しています。
コンクリート製のバンク(斜面)を備えたスケートパークは市内ではここだけです。
*街区公園
歩いていける範囲にある住区基幹公園の一つ。
とくに、半径250メートル範囲内の住民が利用する公園。
つくば市在住のスケーター、会社員の男性(37)は、「日本最古、先進的」と胸を張ります。
白畑児童公園と同程度の“年代物”は、千葉県山武市の蓮沼海浜公園ローラースケート場(1979年供用開始)と群馬県安中市の米山(こめやま)公園(1990年供用開始)など。
「利用者がこれだけ多い公園は他にありません。スケボーの本場アメリカでも、これほど古い公園はほとんど残っていません。世界的にも歴史的価値が高いビンテージ・パークです」と男性。

新たに179人署名

海外から訪れたプロスケーターは、アメリカやフランス、スペイン、オーストラリアなどから50人にのぼるといいます。
つくば市はそのスケートボード場を撤去しようとしています。
8月13日朝、茨城県つくば市役所3階の都市施設課会議室。
「今回、179人が新たに署名してくださいました。お願いいたします。」
スケーターの女性(32)が署名用紙を手渡します。
表題は「白畑児童公園の現状維持を求める要請書」。
受け取った市職員が答えます。
「こないだ、言った通りですね。変わりはないです。市の方針は変わりないです」。室内の空気が張りつめます。
署名提出は、実質5日間で集めた1,925人分を手渡した7月23日に次いで2回目。
署名は累計で2,104人分になりました。
市は、今年度当初予算に白畑児童公園のコンクリート敷地部分(スケートボード場)を撤去し、芝生を張る「白畑児童公園改修工事」に583万円を計上しました。
市は、4年前(2010年)に公園がある地元の区会(自治会)から聴取した“スケートボードの騒音などをどうにかしてほしい”との「要望」に応えたものだといいます。
「改修工事」は、設計業務委託契約(2014年6月19日)を経て、6月後半に測量が始まりました。

唐突な工事説明

測量作業でスケートボード場の取り壊しを知ったスケーターらは、計画の再考を求めて区長を訪ねます。
区長もスケーターの訪問で、「要望」が通ったことを知ります。
市の担当課長ら4人が区長を訪ね、工事の実施を伝えたのは7月10日でした。
区長は「私もうっかりして、(要望してから)5、6年になるから、頭の中からちょっと離れていた」と話すなど、工事は唐突なものでした。
市は「改修工事」の根拠に、公園での花火など夜間の騒音や違法駐車、ゴミの放置といった迷惑行為があることをあげています。
8月13日の話し合いの場でも、市側は「近所の人は長年、我慢してきた。市は安心安全を守る義務がある」と主張しました。
これに対してスケーターは、「かつて騒いだ者がいたのは事実」としながらも、「今はマナーを守っています。夜間騒いだり、違法駐車やゴミを捨てたりするのはスケーターではない。始める前にゴミを拾い、公園を利用する子どもたちともマナーを守って利用し合っている」と訴えました。


みんなで話し合うとき

8月13日に行われた、つくば市とスケーターの話し合い。
市側はスケーターが提出した存続を求める署名(計2,104人分)について、つくば市内分が203人で、うち白畑児童公園の地元分は57人だと切り出し、撤去を求める「逆の立場の署名が40件くらいきている」と語りました。
その“逆の立場の署名”は、スケーターの署名提出を受け、「意思表示を明確にするため」に市が区会に要請したものでした。
市側は、「街区公園は近隣の方を中心に利用していただく公園」と主張しますが、この日、申し入れに訪れたスケーターら4人は全員がつくば市民。
うち3人は白畑児童公園の間近に暮らす「近隣の方」でした。

進め方に違和感

参加者の1人、会社員の男性(31)は、同所で生まれ、自宅は公園のすぐそば。スケートボードは触れたこともありません。
「ここに30年以上住んでいます。一時、スケーターのマナーがひどい時もありましたが、今はよくなっている。」
男性はむしろ、工事の進め方に違和感を持ちました。
「説明もなく、考えを表明する機会もない。これで、いいのか」。
男性にとって公園は、野球などをして遊んだ幼いころの思い出の場所でした。
「同級生も子どもが生まれ、近い将来、この公園で遊ばせます。このまま残していただきたい。」
男性会社員(42)は、スケーターとして20年近くこの公園を利用してきました。
結婚を機に8年前に、「この公園で毎日滑りたい」と転居してきました。
「何年も前から撤去計画があったのなら、なぜ教えてくれなかったのか。」
スケーターの女性(32)は、「公園に歩いて通いたい」と、3か月前に引っ越してきたばかりです。
「毎日来ているのに、市からは一度も話はなかった。公園を利用する子育てママさんも、『そんな話、聞いたことがない。子どものためにも、このまま残して』と話しています。」

議会でも議論に

実は、白畑児童公園のスケートボード場について、4年前の市議会で取り上げられています(2010年9月、一般質問)。
この時、「両者での話し合いが、これからは必要…ではないか」との質問に、都市建設部長(当時)は、「秩序ある利用の仕方が問題になってくる」と答えています。
8月13日の話し合いには、日本共産党つくば市議団の滝口隆一、田中サトエ、橋本佳子3氏と山中たい子元県議が同席して、「人口が増える街に応じたやり方をして、住民の対立を避けてほしい」「地域説明会を開いて市の考えを伝え、みなさんの考えを聞くべきです」と求めました。
“スケートボード場を残してほしい”と訴えた小学生のことばも紹介しながら、山中さんが提唱しました。
「スケーターのマナーが悪かった時は、こういう話し合いができなかったわけですから、今が一番いい時期です。地域の問題、コミュニティづくりとして、区会と区会に入っていない人、子どもたち、スケーター、みんなで真剣に考え話し合うことが大事です。」


共産党議員と出会って

日本共産党の山中たい子元県議は、「今回の事態が地域づくりの契機になれば」と考えていました。
8月中にも入札を公示し、撤去工事を急ぎたい市に、住民間の話し合いと地域説明会の開催を繰り返し求めています。

宣伝中「おーい」

そんな山中さんとスケーターたちの出会いも“地域”でした。
6年前、スケーターの男性(当時=31)らは、白畑児童公園のコンクリート部分が大きく破損して困っていました。
たまたま、宣伝カーで公園横を通りかかった山中県議(当時)に、「おーい」と手を振ります。
「それまで話したことはありませんでしたが、子どものころから、街のあちこちに張ってあったポスターで“顔なじみ”でしたから」と男性。
宣伝カーから降りてきた山中さんに、「直してもらえないかなぁ」と事情を説明すると、「滝口隆一市議に連絡して、いっしょに市役所にいってくれました」。
今回も、公園の撤去話に困惑しているところに、山中さんが宣伝カーで通りかかりました。
別のスケーターが「おーい」。前回同様、「相談にのってくれました」。
山中さんは、「周りの住人に事態を知らせ、理解を得るために、署名を集めてみたら」とアドバイスしてくれました。
「署名集めは初めてだったけど、大変だとは思わなかった」と男性が振り返ります。
「一軒一軒訪ねて話すと、『それはひどいな』『署名用紙置いてやろうか』とどんどん協力してくれます。市原健一市長は(3月市議会で、賛成14、反対13の僅差で可決した総合運動公園の土地買収議案は)反対している議員がたくさんいるのに、(市年間予算の半分の)366億円もかけて総合運動公園を造ろうとしているけど、もっと市民の声を聞いた方がいいよ。」

仕組みは同じだ

署名と対話を通して、住民との理解が深まるにつれ、スケーター自身の視野も広がっていきます。
スケーターの女性(32)は、「いままで見えなかった地域というものが、お話しするなかで、一人ひとりの思いが分かってきました」と話します。
別の一人はこういいます。
「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に、あれだけ大勢の人がなぜ怒っているのか、初めて分かったような気がしました。一人ひとりを大切にするのか、無視するのか。(公園問題も閣議決定も)仕組みは同じです。」
撤去を求める区長も、「ここ近年は、スケボーやっている人らも、子どもたちと仲良くしたり、ゴミもかたづけたり、使い方を考えて利用していたようです」と認めます。
そのうえで、「とにかく静かな公園にしてもらうことが一番。基本は子どもさんからお年寄りまで使ってもらう公園だから」といいます。
スケーターたちは、市に「猶予をください」と話し合いの場を求めています。
「市長にも話を聞いてほしい」と市長公室を訪ねました。
担当職員は「市長に伝えます」とこたえましたが、市長の返事はまだありません。
(「しんぶん赤旗」首都圏版 2014年8月27~29日付より転載)