社会リポート 茨城県が外国人不法就労通報に報奨金 差別助長と農業の人手不足に懸念

茨城県は不法就労を通報した人に報奨金を支払う制度を、2026年度から実施しようとしています。こうした密告の推奨に、外国人への差別を助長し分断をあおるだけでなく、県内の農業の人手不足に拍車をかける懸念が広がっています。

(小林圭子)

茨城県の26年度予算案に外国人材適正雇用促進事業の一つとして、この通報制度の創設が明記されています。不法就労は在留資格の失効や、資格で認められた範囲を超えて働く状態を指します。県内の不法就労外国人の数(出入国在留管理庁〈入管庁〉調べ)が全国最多となっていることを理由に挙げています。

都道府県として初

県担当者によると、一般市民から情報を受け付け、県が調査し違法だと判断した事業者を警察に連絡。警察が検挙した場合に、情報提供者に報奨金を支払う仕組みです。報奨金は1万円で検討中だといいます。入管庁にも同様の制度がありますが、都道府県としては初めて。

県内外国人の福祉・教育の相談支援をするNPO法人「茨城NPOセンター・コモンズ」の横田能洋代表理事は、「通報が優先され、困っている外国人に必要な支援が届かなくなる可能性がある。県民が外国人を疑いの目で見るようになり、擁護する側とのいがみ合いも生まれる」と懸念します。

横田さんは、県に対し不法就労の背景や原因を明らかにし、外国人労働者や雇用者が安心して相談できる窓口の設置などを提案しています。「まずは現状を検討し、通報以外のやり方を関係者を含めて考えるべきです」。

農業に深刻な問題

茨城労働局によると、県内の外国人労働者を雇用している事業所は1万156事業所、外国人労働者は6万7500人(昨年10月末時点)でどちらも過去最多を更新しました。事業所の産業別では農業が最多の27.4%を占め、就農者は1万2246人にのぼります。外国人就農者数は、全国でも茨城県が突出しています。

「県内の農業は外国人労働者抜きには成り立たない。同制度ができれば、外国人が疑われることに不安を持ち、茨城に来なくなるかもしれない。そうなれば、農業の担い手が減り、農業経営を維持できなくなる」。こう懸念するのは農民運動茨城県連合会(茨城農民連)の奧貫定男事務局次長です。

「この5年間の県内の農業経営体の減少率は25%超で全国平均より高い。経営者の安定した所得を保障することが、きちんとした労働者の雇用と賃金を守ることになる」とし、県や国に対し農家への所得補償と生産物の価格保障を求めます。茨城農民連では、制度の問題を市民に知らせるチラシを作成し、県に対し撤回を求める要請を行う予定です。

日本共産党の江尻加那県議は、「同制度は根拠となる法も条例もない。県担当局は、事前の情報共有を入管庁と警察のみで行い、外国人支援団体や人権団体などの意見を聞いておらず、人権問題への認識が欠けている」と指摘します。党県議団は、現在会期中の県議会で制度取り下げを求めていきます。

(「しんぶん赤旗」2026年3月4日付より転載)

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