筑波大が軍事研究!? 防衛省公募の研究に参加 軍学共同へ広がる懸念
国立大学協会の会長校、筑波大学が軍事研究に踏み出すのか─。
防衛省の「安全保障技術研究推進制度」に筑波大学が研究を応募し、昨年12月に採択されたことに批判が高まっています。
防衛省の「安全保障技術研究推進制度」は、「防衛分野での将来における研究開発に資することを期待」と説明されています。
筑波大学の新素材・カーボンナノチューブを利用した耐衝撃材の研究が、全国の大学で初めて5年間最大20億円の研究費がつく「大規模研究課題(タイプS)」として採択されました。
応募は学内の審査委員会で、▽研究が人道に反していない▽研究者の自主性・自立性が尊重されている▽研究の公開性が担保されている▽学術の健全な発展が阻害されない─などに基づいて決定されました。
説明「予定なし」
大学側は「しんぶん赤旗」に対し、「研究は軍事研究や軍学共同にはあたらない」、「申請は本学の判断で国立大学協会の会長校であることとは別だ」と説明。
採択をめぐる学内への説明も「行う予定はない」としています。
「軍学共同反対連絡会」(池内了共同代表)が行った筑波大学への研究中止の申し入れ(11日・非公開)では、小寺隆幸事務局長によると、大学側は、研究計画が研究者の意に反して変更される場合は中止・返上する可能性を示唆する一方、将来にわたって研究成果が軍事利用されない保証について明確な回答がなかったといいます。
「根拠あるか」
連絡会の共同代表の野田隆三郎・岡山大学名誉教授は、「防衛省は将来の軍事利用を掲げている。大学が『軍事研究ではない』と判断しても何の根拠があるのか」と批判しています。
日本科学者会議茨城支部筑波大学分会と安保法制に反対する筑波大学有志の会、日本科学者会議茨城支部は、採択された研究が「『軍事研究』に該当する」とし、研究資金の受け入れ中止を求める抗議声明を2月に発表。
「大規模軍事研究に抗議し、その中止を求める署名」も4,600人分にのぼっています。
研究者から、大学で初となる筑波大学のタイプS採択に、「大学の軍事研究に道筋をつけたのではないか」と懸念の声もあがっています。
筑波大学は2018年12月、軍事研究は行わないとする「基本方針」を決定しています。
池内氏は、「筑波大が『軍事研究をやらない』と宣言しながら、防衛省の制度は問題ないという理屈が通るのか。会長校として他の大学に影響すると心配している」と話しています。
(茨城県・高橋誠一郎)
(「しんぶん赤旗」2020年3月17日付より転載)