霞ケ浦導水事業訴訟 水戸地裁 漁協の請求棄却 原告側控訴へ

茨城県、栃木県の那珂川関係漁協が「生態系が破壊され、アユ漁などの漁業権が侵害される」として国を相手取り、霞ケ浦導水事業の那珂川取水口(水戸市)の建設差し止めを求めた裁判で、水戸地裁(日下部克通裁判長)は7月17日、原告側の請求を棄却する判決を言い渡しました。原告側は控訴する方針。

「不当判決」「行政に追従」と書いた紙を掲げる弁護士(右)と原告漁協の人たち=7月17日、水戸地裁前

「不当判決」「行政に追従」と書いた紙を掲げる弁護士(右)と原告漁協の人たち=7月17日、水戸地裁前


裁判の中で、原告漁協側は▽那珂川と利根川から霞ケ浦に導水しても湖水を浄化することは不可能▽利根川流域の給水人口は減少傾向にあり、新規水源開発は必要ない▽取水による河川流量の減少でアユ資源に影響を与える▽涸沼のシジミの生息環境を悪化させる▽国は「受忍限度」をいうが、原告側が得られる利益は何もなく、漁業権が侵害される─などと主張してきました。
判決は、霞ケ浦導水事業によるアユやシジミ、水質などへの影響について、原告側に詳細に立証するよう要求。
高いハードルを課して、原告側の主張をことごとく退けました。
会見した原告側弁護士らは、「国言いなりの判断。原告側の主張を切り捨てている」「“先に結論ありき”で原告側主張に反論している」と厳しく指摘。
那珂川漁協の君島恭一組合長は、「国寄りの判決で残念。最後までたたかいたい」と述べ、栃木県那珂川漁連の金子清次参事は、「那珂川を殺さないでほしい」と訴えました。

霞ケ浦導水事業

那珂川~霞ケ浦~利根川の間を地下トンネル(導水路)で結んでそれぞれの水を往来させ、▽水質浄化▽新規都市用水の確保─などをはかるとして、1984年に着工された総事業費1,900億円の大規模公共事業。事業主体は国交省です。
事業費の約8割がすでに投入されたにもかかわらず、これまでにトンネル工事が完成したのはわずか3割程度。
学者・専門家や市民団体などが「過大な水を供給する無駄な公共事業」「水質も悪化させる」と指摘しています。
(「しんぶん赤旗」 2015年7月18日付より転載)

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