茨城・笠間 放射能れんが 住民不安 「全容は」「安全対策は」 事業者回答も謝罪もなし
茨城県笠間市の民間採石場に搬入された耐火れんがから高いレベルの放射線が計測され、問題になっています。地元住民が求めて3月末に採石場の事業者が説明会を開きましたが、不安は解消されず、住民は2回目の説明会開催を求めています。
(茨城県・小池悦子)
3月26日の事業者の説明会に参加した住民は、放射能汚染に不安がある中、「事件の全容を明らかにしてほしい」、「今後の安全対策はどうなるのか」、「再発防止策の考えは」などを求めましたが、明確な回答はなく、さらに謝罪もない状況に怒りをにじませていました。
採石場に耐火れんがが持ち込まれたのは昨年10月15~25日(大型ダンプ13台分)。事業者は採石事業の他、中間処理施設として産業廃棄物処理も行っています。
搬入当日の測定で0.224マイクロシーベルト(福島第1原発事故の除染区域判定要件の一つが0.23マイクロシーベルト)の放射線を検出。事業者に対して、28日に市は「専門の測定業者に計測を依頼すること」を求め、29日に県は関係法令に従ってれんがの撤去を指導しました。
事業者は30日、県や市の了解を受けずにれんがを破砕し、31日にかけて市内のもともとおいてあったストックヤードに移動しました。
評価できない?
昨年11月20日に、採石事業所敷地内のれんが撤去跡地で県と市が立ち会い、住民と事業者が測定した結果の中には、最大0.41マイクロシーベルトと、福島の除染区域判定要件を大きく上回るものもありました。これに対し、国は測定器の精度や測定方法などから「評価できない」と判断しました。
昨年12月11日、破砕したれんがの搬出先で、県と市の立ち会いのもと専門業者が測定した結果は、0.12~0.15マイクロシーベルト、放射能濃度は341ベクレルで、国は規制対象外で「問題なし」と判断。しかし実際に測定したものは、破砕したれんが以外の物質が半分混ざったものだったことが判明しました。
今年3月12日の議会質問で、日本共産党の石井栄市議が測定時の状況を確認すると、市は「搬出先では耐火れんがに別の物質が1対1の割合で混じっていたものの空間線量を測定し、放射線濃度は汚染されたれんがを取りだして測定した」と答弁しました。
石井氏は入手資料の粉々になったれんがと別の物質が混ざった写真を示し、昨年11月20日の測定時の国の判断に準拠すると、今回も測定時の状況や方法、れんがの保管状態から、「問題なしの評価をするのではなく、『本来は評価できない』という判断をするべきではないか」と追及。「住民の不安解消のためにも、県に住民立ち会いの下での再測定を求めてほしい」と要望しました。
「これ以上ない」
取材に応じた事業者の事業部長は、「県と市の立ち合いで、専門業者に測定してもらい、国が法的に問題ないと判断」し、市の水質検査も影響なしの判断だったとして、「これ以上はないという見解だ」と述べ、改めて住民の理解や納得を求める考えは示しませんでした。
石井氏は、「再発防止策や安全対策のためにも真相の解明が必要であり、住民に不安を与えた事業者は、住民の納得や理解を得られるように誠実に対応するべきだ」と強調します。
(「しんぶん赤旗」2025年5月7日付より転載)