不安や葛藤消えない 東海第2原発運転差し止め訴訟原告 花山知宏さん
東海第2原発(茨城県東海村)の運転差し止めを求めて、茨城県や東京都の住民らが事業者である日本原子力発電を相手取り、2012年7月、水戸地裁に提訴しています。
原告で3児の母・花山知宏さん(43)に話を聞きました。
(茨城県・高橋誠一郎)
笠間市内の病院で、3番目の子となる長男を出産して翌日の退院という時に、東日本大震災が発生しました。
続く余震に夜も眠れず、いつでも逃げられるようにと、長男を一晩中抱っこしていました。
携帯電話で福島原発事故の緊迫した様子を知ることができましたが、東海第2原発の情報は入らず。
「福島が大変なら東海も同じかもしれない」。避難しなければという不安が頭をよぎりました。
福島原発事故前、自分らしい母乳育児をしたいと、図書館に通い、母乳のしくみや食生活について勉強していました。
長男の母乳育児が軌道に乗ってきた2011年3月下旬ごろ、つくば市内のお母さんの母乳から「放射性物質が検出された」というニュースが目に飛び込みました。
「自分の母乳も汚染されているのではないか」と不安を覚え、与え続けていいのかと葛藤の日々を過ごしました。
食べ物に気をつけながら母乳育児を続けましたが、本来穏やかであたたかいはずの母乳育児が、放射能への不安でいっぱいに。「今でも悔しくてたまらない」と話します。
福島の事故を経験し、「原発は再稼働してほしくないという気持ちをぶつけたい」と原告に。
「裁判に加わったのは、自分の子どもも誰の子どもも、原発事故で二度とつらい思いをさせたくなかったから」と花山さん。
「震災から9年近くたっても、原発事故による不安や葛藤は消えない」。
東海第2原発の廃炉を求めて、毎週金曜日に水戸市で行われている「原電いばらき抗議アクション」。スター卜した12年7月から現在まで続いています。
本音は「こんなに長く続くとは思わなかった」。
県内では、東海第2原発再稼働の賛否を問う「県民投票条例」の制定に向け、3月6日までに約5万人分を目標に署名運動が取り組まれています。
「再稼働の是非は重大な問題。県知事や県議会だけで決めるのではなく、『県民にも直接問うべき』という声が圧倒的多数。原発に賛成の人も反対の人も、原発の問題を『自分ごと』として考えてほしい」と訴えます。
東海第2原発は、運転開始から40年を超える老朽原発です。
一度動かせば何が起きるか分からない。子どもの未来に危険を残したくないという一心で裁判に関わってきました。
証人尋問で「よりよい未来のための判決を」と訴えた花山さん。
裁判は5月以降の結審に向けて大詰めを迎えており、裁判への支援を呼びかけています。
(「しんぶん赤旗」2020年2月29日付より転載)