台風19号 越水・溢水325カ所 浸水面積が広範囲 河川整備計画 見直し必要

記録的な大雨をもたらした10月の台風19号の特徴は、堤防の決壊や越水・溢水など、極めて広範囲に浸水被害を引き起こしたことです。
国管理河川14水系30河川、都道府県管理河川61水系292河川の計325カ所で、越水等による浸水が起こっていたことが12月27日までに分かりました。
国土交通省資料「被害状況」(12月12日)から、堤防の「決壊」箇所、堤防がある所からあふれる「越水」、堤防がないところからあふれる「溢水」箇所を調べてみると―。
越水は、国管理河川で9水系6河川34カ所、都道府県管理河川17水系75河川81カ所、合わせて115カ所で発生しています。
国管理河川では、千曲川(長野県)12カ所、阿武隈川(福島県)10カ所、吉田川(宮城県)7カ所に集中。
都道府県管理河川では阿武隈川水系、那珂川水系、利根川水系、信濃川水系で多く発生しています。
溢水は、国管理河川8水系15河川49カ所、都道府県河川26水系188河川161カ所、合わせて210カ所。
都道府県管理河川をみると、茨城、群馬、栃木、埼玉にまたがる利根川水系で56カ所、荒川水系で41カ所と約6割が関東の都市部に集中していることが分かります。
越水などから決壊の危険も出てきます。
国交省によると、台風19号の浸水面積について、国管理河川で約2万5000ヘクタール。都道府県管理河川で約9500ヘクタール。
西日本豪雨(18年7月)の国、都道府県管理河川を合わせた約1万8500ヘクタールと比べて、極めて広範囲の浸水だったことが分かります。
堤防の決壊は71河川140カ所でした。うち国管理河川の決壊は7河川12カ所。堤防の決壊は西日本豪雨の約4倍近くになります。
国土交通省の河川整備計画は、30年に1度の異常気象に備えるものですが、温暖化がすすむなか、100年に1度の記録的な大雨にも耐えうる計画の見直しが求められています。

(遠藤寿人)

ダム事業よりも堤防強化優先を
水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之(てるゆき)共同代表の話

ダム事業よりも、肝心の堤防整備を優先すべきです。越水が起きても堤防を決壊しにくくする、かつての建設省が進めていた耐越水堤防工法を認めて堤防の強化をはかることが大事です。
都心部には無堤防地区が存在し、氾濫する所には、人家を建てないようにする。建てるなら2階建てにするなど立地規制を盛り込んだ条例が滋賀県などでできています。人命を守るためには必要ではないでしょうか。
(「しんぶん赤旗」2019年12月28日付より転載)

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