東海第2原発 運転差し止め 水戸地裁「防災極めて不十分」

日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)をめぐり、茨城県などの住民ら224人が原電を相手取り、運転の差し止めを求めた訴訟で3月18日、水戸地裁の前田英子裁判長は「人格権侵害の具体的危険がある」と述べ、運転の差し止めを命じる判決を言い渡しました。

主な争点は、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)の評価や、人口密集地での広域避難計画の策定など。

原告側は、基準地震動が過小に評価されていると主張。首都圏唯一の原発で周辺30キロ圏内に全国最多の94万人の人口を抱えることから、避難の困難性などを訴えていました。

判決は、避難計画を実行し得る体制が整えられていると言うには程遠く、「防災体制は極めて不十分で安全性に欠け、人格権侵害の具体的危険がある」と指摘。「多数の周辺住民の生命、身体に重大かつ深刻な被害を与えることになりかねない」と断じました。基準地震動の評価は「過誤、欠落があるとは言えない」としました。

判決後の報告集会で、河合弘之弁護団長は「『避難できない』という一点で勝利した素晴らしい歴史的判決。原告の結束が今日の判決を勝ち取った」と評価しました。

原告は2012年7月に提訴。東海第2原発は東日本大震災以降、停止中です。原子力規制委員会は18年9月、被災原発として初めて新規制基準にもとづく安全審査への「合格」を、18年11月には最長20年の運転延長を認め、原電は22年12月完了をめどに再稼働に向けた工事を進めています。

東海第2差し止め判決 「福島に報いた」

「勝ったー。私たちが頑張ったからよ」。

30キロ圏内に全国の原発で最多の94万人を抱える日本原子力発電東海第2原発の運転差し止めの判決が下された3月18日、水戸地裁前は歓声に包まれました。

地裁前に詰め掛けた支援者を前に、「勝訴」「首都圏も守られた」の手持ち旗が掲げられると、「やったー」という声が上がり、提訴から8年半のたたかいをねぎらい合う姿が見られました。

原告団事務局の伊藤博久さん(38)は、「非常にうれしい。2011年1月に長男が生まれ、その後、福島第1の事故があり命の重さを計る大切な裁判だと思っていた」と顔を紅潮させて語りました。

東海第2原発から直線距離で1キロ強に自宅がある小林栄次さん(71)は、「事故が起これば、二度と帰ってこれない場所に住んでいる。判決を受け止め、県民の命と暮らしを守るためには廃炉しかない」と断言。

報告集会では、原告団の大石光伸共同代表が拍手に包まれながら、「首都圏4千万人の命に関わる判決。みなさんの毎日の暮らし、命に関わることについて司法が大変重く受け止めた。福島のみなさんの、同じ思いを二度とさせないでほしい、原発を止めてほしいという思いに報いる判決です」と発言しました。

(吉岡淳一)

【解説】人口密集地 避難容易でない

「東海第2発電所の原子炉を運転してはならない」―。判決が言い渡された瞬間、法廷内は安堵の雰囲気に包まれました。

提訴から8年半。首都圏唯一の原発に運転の差し止めを命じる画期的な判決が下されました。

水戸地裁の前田英子裁判長は、周辺人口94万人を抱える東海第2原発の立地性を重大視。原発事故に伴う避難の困難性を強調しました。

判決は、原子炉を設置する際の5段階の「安全対策」(「深層防護」)に言及。このうち、放射性物質が大量に放出された場合を想定した第5の防護レベルを達成するためには、「実現可能な避難計画と、実効し得る体制が整備されていなければならない」と指摘し、「人口密集地帯の原子力災害における避難が容易ではないことは明らか」と断じました。

また判決は、原子炉の運転により発生した事故は、「他の科学技術の利用に伴う事故とは質的にも異なる」と指摘。「深層防護」の一つでも失敗すれば事故が進展し、「多数の周辺住民の生命、身体に重大かつ深刻な被害を与えることになりかねない」と主張し、「人格権侵害の具体的危険がある」と述べました。

(茨城県・高橋誠一郎)

(「しんぶん赤旗」2021年3月19日付より転載)

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