放射性廃棄物L3「素掘り埋設」計画の中止を求めます
放射性廃棄物L3の「素掘り埋設」計画に疑問と批判が広がっています。
日本共産党茨城県委員会は、今年4月「放射性廃棄物L3の埋め立て処分について」見解を発表しました。
国内初の埋設計画
原電は、東海発電所解体により発生する放射性廃棄物L3の自社敷地内への埋設を計画し、原子力規制委員会の安全審査を経て、県、村の同意が得られれば、2018年度にも作業を始めたいとしています。
今回の埋設計画は、商業用原発の廃炉措置に伴う国内初の放射性廃棄物の埋設施設となるものです。
遮断型で「一時保管」に
原電は、昨年9月24日東海村議会に対し「埋設計画」を説明しました。
これをうけ日本共産党茨城北部地区委員会と党東海村議団は、昨年11月25日に埋設計画に関しての申し入れをおこないました。
- 「低レベル廃棄物」と言っても上限値はセシウム137で10万ベクレル/kg、コバルト60で1千万ベクレル/kg、ストロンチウム90で1万ベクレル/kg というものです。
- セシウム137やストロンチウム90の半減期は30年間とされ、90年後でも1/8も残っているのに、処分場の管理は50年でその後は放置状態となります。
- しかも埋め立て施設は素掘りであり地下に浸透し、放射能によって周辺の自然環境が汚染されることは必至です。
- 埋め立て処分は中止して、外部への漏出を防止する遮断型施設に「一時保管」し、一定期間ごとに保管状況を確認すること。
住民に十分な説明を行い、合意のない埋め立てはやめることを求めます。
L1L2を含めた全体計画を
東海1号炉が2001年解体工事に着手してから、すでに13年以上経っていますが、この間解体工事は当初計画から大きく遅れています。
これは、原子炉廃棄措置に伴う放射性廃棄物処理処分の国と原電の方針が全く不十分で、使用済核燃料の処分方法も場所も確立されていない上に、やっと決まった処分方法も(「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」及び規則)国民の合意はなく、実施の見通しも立たっていません。
原電は、L3の敷地内埋設を求めていますが、今後L1、L2など高いレベルの廃棄物の埋設も東海村や茨城県内に求めてくるつもりなのかどうか。全体計画を示すべきです。
その場しのぎの埋設計画の策定はやめるべきです。
これ以上の汚染は許されない
原電は、「地下水は、海に流れている」と述べていますが、近くに漁業関係者も多く暮らしています。
しかも地下水は複雑な動きをすることも知られており、地下からまっすぐに太平洋に流れ出すという前提も正しくありません。
福島原発事故による汚染に加え、これ以上の環境汚染は許されません。
再稼働やめ、英知集め処理方法の検討を
安倍内閣は原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ原発を使い続けようとしています。
しかし使用済み核燃料をはじめ放射性廃棄物の処分方法は明確になっていません。
まさに「トイレなきマンション」という状況です。原発を再稼働させれば、さらに放射性廃棄物が増え、処理は一層困難になります。
再稼働は中止し、そのうえで安全な処理方法について英知を集めて検討すべきです。
その際、日本学術会議が提案し、わたしたちも原電に申し入れた「一時保管」という考えが重要だと思います。
L3素掘り埋設の問題点
Q1…L3(レベル3)廃棄物ってなんですか?
A1…停止した原発を解体することによって発生する廃棄物を放射能汚染度によって分類し、レベルの高い物から、L1、L2、L3 と称しています。
- L1―放射能レベル極めて高い炉内構造物=制御棒等
- L2―(L1 とL3 の中間レベル)廃液の均質固化体等
- L3―放射能レベルの極めて低いコンクリート、金属等
使用済み核燃料(人間が近付いただけで即死)は、L1より更に高レベルで3つとは別格です。
Q2…そのL3埋設計画ってなんですか?
A2…1998年に運転を停止し、解体作業中の東海原発のL3廃棄物を原電原発の敷地内に「トレンチ処分し50年間管理する」と言います。
「トレンチ」とは、「溝」のことですから、地面に溝を掘って埋めるということです。
そして、50年間は地下水を監視するが、その後は野放しということになります。
Q3…L3 は具体的にはどれ程のレベルなのですか?
A3…国が定めている「核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則」によると、コバルト60、ストロンチウム90、セシウム137だけに限って上限値が示され、セシウム137の場合は、濃度が上限10万ベクレル/kg(以下Bq/kgと記す)と規定されています。
Q4…実際に埋め立てようとしている物の放射能はどれ程のレベルなのですか?
A4…「原電東海 L3 廃棄物核種毎の量一覧表」に示します。
原電発表の数値を基にしたものですが、合計すると1兆7千億ベクレルに達します。
L3廃棄物放射性物質一覧表
Q5…「指定廃棄物」というのは良く聞きますが、どんな物ですか。
A5…「指定廃棄物」は、下水道処理で発生した汚泥などの廃棄物ですが、福島第一原発の事故によって福島県と近県に降り注いだ放射能を含んだものです。
セシウム134と137の合計で8,000~10万Bq/kgの物。
環境省は、「分厚いコンクリートの壁の中に廃棄物を閉じ込め、四方から雨水が入りこまない構造として、監視者が内部に入って保管状態を目視できる施設」と言っています。
Q6…原電は、「指定廃棄物のセシウム濃度は8,000Bq/kg以上。L3廃棄物は7,000Bq/kg以下」と、言っていますが。
A6…セシウムの濃度だけを単純比較して、あたかもL3廃棄物が指定廃棄物よりも危険性が低いかのように宣伝しています。
しかし埋め立てる放射性物質の核種とベクレル総量こそが最大の問題です。
実際に埋設する廃棄物のセシウム濃度の最高値が、7,000Bq/kg以下に収まるという保証もありません。
L3廃棄物には、体内に摂り込んだら骨に蓄積するというストロンチウム90 など、セシウム以上に危険な物質も含まれ、それ以上に危険な毒物=プルトニウムが存在する可能性も否定できません。
埋設する廃棄物の総量、含まれる放射性物質のベクレル総量からみても、格段に危険性の高いものであることは明らかです。
Q7…原電は、「原子力機構の研究用実験炉JPDRのL3廃棄物埋設実験で安全は実証済」と言っていますが。
A7…JPDRの場合、「廃棄物はコンクリートだけだった」と言う事が明らかにされています。金属類は含まれていません。
「コンクリートと金属を埋設」という原電の計画とは、前提条件がまったく異なります。
しかも、JPDRは、「実験」は1996年の埋立完了時からほぼ2年間だけで終了しています。
放射能消滅まで百年以上も必要なのに、2年間だけの「実験」で、「安全性を実証できた」と言えるでしょうか。
埋設量は、JPDRは1,670トン。原電はその10倍の約16,000トンですから、規模的に見ても比べものになりません。
Q8…商業用発電炉のL3廃棄物埋め立ては、東海原発が最初ということですが。
A8…廃炉が決まり、L3廃棄物については「当面敷地内保管」と言っている中部電力浜岡1,2号炉などが後に続くことになります。
東海原発で「素掘り埋設」を許してしまったら、日本全国の廃炉原発が「右ならえ」で追随することになります。
Q9…この問題について、日本共産党はどうすべきと考えているのですか。
A9…原発を再稼働させれば、放射性廃棄物が増え、処理はいっそう困難になります。
再稼働は断念し、そのうえで安全な処理方法について英知を集めて検討すべきです。
その際、日本学術会議が提案し、私たちも原電に申し入れた、次のような「一時保管」という考え方が重要と考えています。
(1)管理に当たっては、場所が明確な表示等により後世に渡って一目でその内容が分かるものとすること。また、立ち入り確認ができる施設の構造及びその場所とすること。
(2)管理状況の確認は、「一時保管」の考え方により、毎日実施すること。
(3)雨水・海水等の浸水対策、地震・突風・竜巻等への対策を十分行った遮断型構造による施設を整備し、厳重に管理すること。
茨城民報2015年号外(PDF)