旧動燃、物言う職員「敵」判定して差別 賠償訴訟、3月14日判決 水戸地裁

高速増殖炉「もんじゅ」などを運営する日本原子力研究開発機構(原子力機構)の元職員6人が、「敵性評価」と呼ばれるレッテル貼りによる不当な評価で、賃金・昇格差別を受けたとして計1億6000万円余の損害賠償を求めた訴訟の判決が3月14日、水戸地裁であります。使用者側の内部資料によって、差別的な労務政策が裏付けられた裁判の判決が注目されます。

職員を「敵性」が高い順に「A」「B」「C」「観(要観察の略)」と、1人ごとに「判定」した一覧表。安全な職場づくりのために意見をあげた職員を選別しています。

表の横には「理由」の記入欄があり、「●と親しい」「(同僚の)祝う会出席」「役選(労働組合の役員選挙のこと)の際、(態度)明確にせず」などと記されています。

この「敵性判定表」と呼ばれる一覧は、1980年ごろ、当時の動力炉・核燃料開発事業団(動燃、後に原子力機構へ組織統合)の東海事業所(茨城県)で作成したとみられます。判定で“危険視”された職員は「ぶんまわし」(配置転換)や「封じ込め」(職場での孤立化)などの差別をしたことがこの内部資料で確認できます。

これは「西村資料」と呼ばれる内部資料です。動燃の総務部次長だった故西村成生さんが自宅に残した資料の一部。西村氏は、主に労務や総務部畑で、労組や選挙対策、原子力反対派住民の切り崩し工作を担当し、その記録を多数残していました。

元職員らは2015年7月に提訴。原子力機構側は、「差別の事実はなかった。全面的に争う」としました。

原告らは、自身が長年、等級などを据え置かれ、管理職となることはありませんでした。原子力機構側が出した資料によって、原告らは同学歴の同期入職の職員と賃金総額で3,000万円もの格差がわかりました。「敵性判定」の評価と一致しました。

賃金格差について、原子力機構側は「個別の評価の結果」などと主張していました。しかし、原告らの勤怠は他の職員と同様に問題なく、しかも当時の上司が「与えられた仕事はしっかりこなしていた」と証言。原告らの低い賃金が職務以外で決められている疑いを強めました。

「西村資料」について原子力機構側は当初、「承知していない」と主張。他方、西村氏の妻、西村トシ子さんが、資料を自宅で保管していた経過などを証言しました。トシ子さんは、夫の成生さんが「(茨城県警)勝田署に寄ってくる」と語っていたことなどを証言。警察などと連携しながら差別政策が進められたことを裏付けました。

原告の椎名定さん(69)は、「他の職員から隔離するため、本来なら不要と思われる部署に長い間、据え置かれ、みせしめにされて悔しかった。核燃料サイクル開発がスケジュールありきだったために、安全面で物言う職員を敵視して黙らせようとしたのだと思う。原子力機構の差別を認める判決を出してほしい」と語ります。

(「しんぶん赤旗」2024年3月13日付より転載)

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