常総水害訴訟 河川の管理不備 国は受け止めよ 勝訴原告の思いは

2015年9月の関東・東北豪雨にともなう鬼怒川の氾濫について、国の河川管理の不備を認め、茨城県常総市の一部住民に計約3,900万円を支払うよう国に命じる判決を言い渡した7月22日の水戸地裁(阿部雅彦裁判長)判決。被災原告の思いは─。

(茨城県・高橋誠一郎)

「国の瑕疵を認めてくれたのは歴史的なことだと思います」─。原告団の片倉一美共同代表は判決をこう受け止めました。

争点となったのは、市内2地区の河川改修が適切だったかどうか。
判決は、若宮戸地区で自然堤防の役割を果たしていた砂丘林を国が河川管理区域に指定しなかったため、業者が掘削して河川があふれたと認定。「指定するべき義務があったのに、これを怠った」として、若宮戸地区の住民9人への賠償を認めました。

原告代理人の只野靖弁護士は、「水害訴訟で河川管理者の瑕疵が認められるのはレアだ。意義がある」と評価します。

「河川区域に指定しなかったという主張が全面的に認められた」と、若宮戸地区で花の生産販売に携わる、原告の高橋敏明さん(68)は、一部勝訴を喜ぶ一方、「上三坂地区の被害も裁判所に認めてほしかった」と複雑な表情を浮かべます。

裁判で賠償を求めたのは31人。以前から危険だった、上三坂地区の整備を後回しにした改修計画の誤りを主張しましたが、裁判所は退けました。
大東水害訴訟の最高裁判決(1984年)が、改修計画に問題がなければ瑕疵はないとして、行政責任を不問にしているためで、上三坂地区はこの判例を元に棄却されました。

「国の責任はないという判決にあぐらをかいて、河川管理そのものが国民の方を向いていない」。片倉さんは厳しく断じます。

訴えが認められなかった原告らは、今後控訴する意向です。
「被災後の国土交通省の対応があまりに酷かった。国の考え方を直さないと、毎年同じ水害被災者が出てくる。少なくとも、歴史的な判決が出たことを国交省は真摯に受け止めて、危険なところから河川管理をやるように変えてほしい」─。片倉さんはこう投げかけます。

(「しんぶん赤旗」2022年7月26日付より転載)

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