布川事件で再審無罪・桜井昌司さん語る 冤罪防止 命の限り

国賠訴訟控訴審 来月25日判決

1967年に茨城県利根町布川で起きた強盗殺人の「犯人」とされ、その後再審無罪となった桜井昌司さん(74)。
無期懲役で29年にわたる獄中生活をつづった『俺の上には空がある広い空が』の出版記念コンサート(日本国民救援会水戸支部主催)が5月15日、水戸市内で開かれました。

桜井さんは自作の詩の朗読や歌も交え、6月25日に東京高裁で控える布川国賠訴訟の控訴審判決への思いを語りました。

(茨城県・高橋誠一郎)


桜井さんは20歳の秋、共犯とされた男性と逮捕。2度目の請求で裁判のやり直しが決まり、2011年に再審無罪を勝ち取りました。

冤罪防止と事件の真相解明のためたたかう布川国賠訴訟は、一審判決で警察官の捜査と検察官による証拠開示の拒否について、その違法性に言及。
今回の控訴審では、一審で退けられた検察官による起訴事実の違法性も焦点になります。

コンサートで桜井さんは、検察官の手持ち証拠について、全面開示の必要性を力説。
「証拠は全部裁判に出して当事者同士で見る、その上でどれが正しいかみんなで判断する、それが当たり前です」と強調しました。

また、控訴審で「自白」の信用性を疑わせる録音テープなどの証拠について、警察から検察にわたった日付の開示を拒む態度に終始した検察側の対応を批判。
「日付を教えてしまうと、起訴も違法になると思ったからではないか。無罪になる証拠を隠せば起訴も違法だ」と話し、警察官の偽証に加担した検察官の責任を指摘します。

20年2月に直腸がんで約1年の余命宣告を受けながらも、冤罪のない社会へ全国で講演活動を続ける日々です。

がんになった人に希望を届けたいとも話す桜井さんは、「快方に向かってきている」と明るい表情を見せ、がんがきっかけでつくった詩『私の人生』を歌い、コンサートを締めくくりました。

「人生は一度限り 今日も一度限りと知ったあの日から 今なすべきことをただ目の前のことを明るく楽しく生きてきた それが私の人生」。

「裁判所は起訴の違法性まで認めて完全勝利すると確信している」と語る桜井さん。
「これからも命がある限り、冤罪とたたかって司法を変えてやろうと思うんです」─。そう言い切った桜井さんの言葉と瞳には決意がにじんでいました。

(「しんぶん赤旗」2021年5月18日付より転載)

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