新型コロナウイルス問題 老健施設で集団感染 職員足りずに過労 茨城・つくば
福祉施設や病院で新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が相次いで発生しています。
4月3日までに計13人の感染が判明した茨城県つくば市の介護老人保健施設「アレーテル・つくば」の関係者が「しんぶん赤旗」に訴えた窮状は――。
清掃業者も来ない 保育園も預からない
「職員に新型コロナウイルスの感染者が出て人手が足りないうえ、コロナを恐れて清掃や洗濯の業者、介護資材の業者も取引を断ってきました。職員の家族も仕事に行けず、保育園も子どもを預かってくれない…。まるで“村八分”です」。
「アレーテル・つくば」の関係者はそう嘆きます。
3月28日に職員の感染者が出たのをはじめ、相次いで感染者が出ました。
4月3日までに合計13人の感染者が明らかになりました。その多くの人は軽症です。
しかし、被害が深刻です。
業者が来ないために、施設内の清掃や洗濯は職員がやらねばなりません。介護に必要な使い捨てエプロンや手袋、ゴーグル、マスクなどの在庫も底をつきそうだといいます。
施設に残っている入所者は87人。
職員はコロナ感染のほか、過労などで休み、看護師が4人減って6人、介護士は4人減り20人。事務職を入れても60人弱の体制です。
「施設入所者は要介護1~5までの高齢者で、認知症の方が9割。24時間体制で健康管理が必要です。もともと介護士が10人くらい足りない状況だったのに、コロナ感染で人が減り、このままでは施設の運営ができなくなる」。
人手不足 コロナで噴出 体調不良でも休めず
新型コロナウイルスの集団感染で苦しむ、茨城県つくば市の介護老人保健施設「アレーテル・つくば」。
3月28日以降、施設の職員2人と入所者11人の感染が明らかになっています。
濃厚接触者として検査した入所者と職員ら約161人は陰性でした。
施設の関係者は、風評被害が深刻になっているといいます。
「重病の入所者や病気を抱えた職員が、近隣の病院で受診を拒否されています。新型コロナ感染が疑われているとしても、受け入れてくれる病院が必要です。このままでは持病が悪化して重症化する人も出かねない」と話します。
いま、施設には87人の入所者が残っています。
しかし介護職員の不足で、「入浴は3月30日に25人が1回入っただけです。体を拭く清拭(せいしき)もできていません。入所者さんの目やにを拭き取りたくても、目からウイルス感染するのが不安でできません」。
食事は、以前は入所者が集まって食べていました。
「今は感染予防のため、1人ずつベッドで食べており、時間と手間がかかります」。排せつの世話も手が回らず、おむつ替えも1日2~3回のみという状況です。
「職員は疲れ切っています。それなのに、同じ法人からも外部からも人的支援がありません。そもそも今回の問題が起きる前から、日常的に人手不足だった」。
人手不足の原因は、政府が高齢者や介護施策の予算を削ってきたからだとも。
「介護労働者がまともに生活できる保障をしてこなかった。今回のコロナ感染で、問題がいっきに噴き出た感じだ」と指摘します。
施設内で感染が広がった背景に、「体調不良でも勤務を交代する人員がおらず、休めなかった状況がある」といいます。
この関係者は訴えます。
「感染者を隔離するといっても、目が届かないと入所者の転倒やベッドからの転落の恐れが出てきます。こんな状況でどうしたらいいのでしょう。何とか人の手当てをしてほしい」。
(武田祐一)
共産党が茨城県に実態把握要請
日本共産党の山中たい子県議、江尻かな県議は4月3日、茨城県に「アレーテル・つくば」の実態把握と人員の確保を要請しました。
県は、法人として要請があれば対応すると答えました。
(「しんぶん赤旗」2020年4月6日付より転載)