図書館勝手に廃止・移転 “説明ない 情報開示を” 市民の声生かした駅前整備に 茨城・取手

茨城県取手市で、市が突然、現在の市立取手図書館を廃止すると発表したことに、市民の驚きや不安が広がっています。
市はJR取手駅西口の区画整理事業と一体で再開発事業を推進。再開発ビル内に新たな図書館を設置する計画ですが、市民からは「既存の図書館は廃止でいいのか」、「いつ、どこで、決まったのか」、「市民のことより、大規模開発を優先している」など批判の声があがっています。

(茨城・小池悦子)

現在の取手図書館は、JR取手駅東口から歩いて10分ほどの利根川の土手沿いに立地。市立福祉会館や市民会館も並ぶ、地域の利用者には馴染みの場所で、多くの図書館ボランティアに支えられ市民に愛されています。

「広報で知った」

図書館計画は、本来の所管ではない再開発事業を進める都市整備部(市長部局)が担当。市は昨年2月、再開発ビル内に複合公共施設整備事業として図書館建設を決定し、3月の『広報とりで』で、「既存の取手図書館の機能や規模を拡充して移設し、既存の取手図書館は廃止する」と突然発表しました。

日本共産党の加増充子市議が発表直後、図書館関係者などに聞き取ると、関係者らも「広報で知った」という状況でした。

駅前の活性化、人が集まる場所にするという名目の再開発事業は、250戸21階建てタワーマンションと、図書館が入る5階建て非住宅棟の2棟の建設を計画しています。

「駅前開発を考える会」の遠藤俊夫さん(元藤代公民館長)は、再開発事業の一部であっても、図書館新設は、市教育委員会の責任で進めるべきだと、市や県教委に訴えてきました。

遠藤さんは、「社会教育行政の観点から図書館構想を考えるべきです。駅前活性化だけでなく、市内全体の中で図書館をどうするのか、図書館のネットワークを市内でどうつなげていくのか、市教委が主導で計画し進めるべきものです」と力説します。

市が再開発事業と区画整理事業の合併施行で進めた区画整理は32年かかり、当初の計画事業費の153億円を大幅にこえて220億円を投入。区画整理後のA街区に、組合施行の再開発計画を進めてきました。

再開発は、地権者20人、0.7ヘクタールを対象に始まりましたが、現在は地権者7人、0.5ヘクタールに減少。市主導の図書館を含む複合公共施設の想定事業費は現時点で約50億円を見込み、運営管理は指定管理としています。さらなる市の負担は避けられません。

市議会で追及

共産党市議団は、「にぎわいをつくる」を最大のうたい文句で始まった再開発事業で、際限のない市の歳出拡大や、地権者の中では事業への不安や迷いが生じている状況などを指摘し、「市の再開発事業の行き詰まりではないか」と議会で追及してきました。

10月30日に開かれた都市計画(再開発事業決定)案の作成についての公聴会で、公述人として発言した考える会の遠藤さんは、10月11日の住民説明会について「事業の具体的な中身や工事費用、市の支出など一切の説明がなかった」と指摘し、「再開発事業で駅前環境がどう変わり、市民にとってどうなるかの判断もできない。市の税金を使うのだから、きちんと情報を開示するべきだ」と強調しました。

もう一人の公述人、高木晶さん(元党取手市議)は、建設資材や物価高騰による今後の事業費暴騰などを挙げ、「“公共の福祉の増進に寄与する”との都市計画法の目的にそったものになっていないのではないか」と指摘。
地権者の自己活用も含む市街区整備や市民参加の公共公益施設整備を、民主的な協議で進めることを求め、「都市計画決定案は白紙に戻すべきだ」と力説しました。

市民生活優先のまちづくりへ、公共の福祉に寄与する都市計画への転換が求められています。

(「しんぶん赤旗」2025年11月19日付より転載)

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