クローズアップ 百里基地機能強化狙う 茨城空港に新たな誘導路 軍民共用に住民不安広がる
茨城県の大井川和彦知事は2023年11月の記者会見で、茨城空港(小美玉市)に「新たな平行誘導路などの設置」を発表しました。24年11月の2回目の「茨城空港のあり方検討会」で計画の具体化が進み、新たな平行誘導路は百里基地の機能強化につながるものではないか、と住民や市民団体などに不安が広がっています。
(茨城県・小池悦子)
10年3月に開港した茨城空港は、正式名称が「百里飛行場」で防衛省が所有し、航空自衛隊百里基地が運営する「軍民共有」の空港です。開業当初に見込んだ利用数が80万人ですが、23年度の国内線利用が過去最多の70万108人の状況です。
平和を願う公園
百里基地には「く」の字に曲がった誘導路があります。「戦争につながる軍事基地のために土地は売らない」と闘われた百里裁判(1958年から1988年)があり、「憲法違反の自衛隊が土地を買いあげる資格はない」と、空港に隣接する形で「一坪運動」により百里平和公園や旧射爆跡地は、民有地になっています。平和公園では、毎年年始に、平和を願い初午まつりが行われています。
11月の検討会では、「茨城空港のあるべき姿」として、県の成長や県民の豊かな生活を支える国内外との観光・ビジネスの拠点となる空港をめざし、県や周辺県の災害対応拠点となるために「空港機能強化に取り組む」と提案。そのために「平行誘導路など施設の確保」が示されました。
さらに短期目標で1時間に最大3便程度、中・長期で1時間に最大8便以上増便するとしています。さらなる利用促進が出される一方で、騒音被害や事故、県民負担など懸念される事項については示されていません。
民有地接収懸念
日本共産党の江尻加那県議は12月9日、空港担当の営業戦略部とヒアリングを行いました。高橋誠一郎県党政策委員長(参院選挙区予定候補)や県平和委員会、住民らが同行しました。
民有地の接収など、懸念事項には一切ふれない県のバラ色の説明に対して、参加者からは「空港の将来のためにとあるが、検討委員会には住民は入っていない」、「土地を持っている人への説明がない」「県が税金をつぎ込んでつくってできたら自衛隊に差し上げるのはおかしい」、「自衛隊が百里基地を広げたいという狙いが見える」など意見が上がりました。
平和委員会の篠原睦氏は、「県が進めているように見えるが、主導は防衛省。明らかに安保3文書による百里基地強化が狙いだ」と指摘。「早急に関係団体の皆さんと相談して運動を進めたい」と、16日に協議の場を設定しました。新たな誘導路等の設置ストップを求めた運動へ、26日に複数の団体で県への申し入れと記者会見を行います。
(「しんぶん赤旗」2024年12月19日付より転載)