クローズアップ 茨城・取手 国保18歳以下ゼロに 基金が44億円に膨張 還元求める声高まる
茨城県取手市では、2007年4月の前市長就任直後に国民健康保険税(国保税)を値上げして以降、県内一膨れ上がった国保財政基金(国保基金)を市民に還元させようとする運動が広がり、実を結ぼうとしています。
(茨城県・小池悦子)
07年に赤字だった国保会計は、国保税値上げ後あっという間に黒字に転換。10年に700万円程の国保基金は17年に13億7千万円、20年に27億7千万円と積み上がり、21年には43億9千万円になりました。
一方で、国保加入者は年金生活者が多く、非正規雇用労働者や自営業、無職など低所得世帯が多くを占めています。16年時は滞納世帯は約2,800世帯、支払い困難者への制裁処置となる短期保険証は約1,000世帯、資格証明書は約300世帯となりました。
日本共産党市議団(4人)は、住民の「高すぎる国保税の引き下げを」という願いに応え、取手地域社会保障推進協議会などと連携し、請願署名など粘り強い運動を議会内外で続けました。
議会全体で
18年度からは県内初の国保税18歳以下半額減免を実現。それでも国保会計は、毎年大幅黒字で基金は積み上がっています。
21年9月議会の共産党の質問で、市は国保基金残高が年度末44億円になる見込みを明らかにしました。共産党市議団の「取り過ぎた国保税は還元を」の訴えに、他会派議員も「国保税引き下げは共産党の一貫した主張だが、一党だけの問題ではない」と、議会全体が動き出しました。超党派での福祉厚生常任委員会からの提案で、議会は市長に対して「21年度の積立金16億円を加入者へ早急に還元を」と要望しました。
市は、22年の国保制度改正(都道府県単位化)と合わせ、総額3億5千万円(1世帯平均基準2万5千円)の引き下げと、18歳以下第1子5割、第2子以降全額減免へと引き下げが実施されました。
コロナ禍や制度改正、物価高騰など厳しい情勢の中でも、国保基金は積み上がり、22年度末で基金は44億円となっています。
市民世論が高まる中で、共産党市議団は23年12月議会へ、子どもの国保税ゼロへ条例案を提出しました。
共産党・遠山ちえ子市議の質問に、市は18歳以下全額減免に必要な予算を約800万円と試算を提示。党市議団は44億円のほんの一部で実現可能な子どもの国保税ゼロへ、議会が一致して条例を共同提案し実現させたいと、福祉厚生常任委員会で賛同を呼びかけました。
決議を可決
自民党議員からは、「予算措置を伴う条例提案は、執行部の権限を侵害することになる。議会として決議を出してはどうか」との提案が。党市議団は議会最終の12日、決議は賛成できるが、市長に対し、実行に拘束力を持つ条例こそ現実的な提案だと主張。加増みつ子市議が「18歳以下の国保税全額減免」へ条例提案をしました。
賛成は共産党と生活者ネットワークのみでしたが、委員会提案の決議は可決されました。子どもたちの国保税ゼロまであと一歩と迫っています。
(「しんぶん赤旗」2023年12月28日付より転載)