野菜高騰の要因 生産力後退が背景に 従事者20年で半減 茨城
ニンジン1.7倍、ピーマン1.4倍、ネギ1.3倍―。農林水産省の統計によると、8月以降、野菜が平年と比べ軒並み高騰しています。猛暑や渇水の影響に加え、背景には高齢化に伴う生産者や作付面積の減少があります。野菜の産出額が全国2位(2021年)の茨城県を訪ねました。
(鈴木平人)
卸売市場・東京青果では、この時期の野菜の主要産地は北海道、東北、関東近県の高冷地などですが、どの地域でも同様に野菜が高騰しています。
市場担当者は、「猛暑や少雨による干ばつでの生育停滞、猛暑の中での降雨により品質低下や病害発生が起こった結果、入荷量が減少して相場が上がっています」といいます。
気候変動影響
茨城県西部の桜川市で、息子とともに野菜農家を営む女性(70)は、「水不足で作柄が遅れ気味なことに加え、この時期に出荷のピークを迎えるナスは、水が足りないと表面のつやが出ない『ボケ』と呼ばれる状態になります。こうなると等級が下がる上に、廃棄も生じます」と話します。
「近年は雨の降り方も不規則になってきて、同じ作物をつくるにも技術的に難しくなっています」。気候変動の影響は野菜の生産現場でも顕著です。
「この夏の異常気象に加え、背景には高齢化による生産力の後退があります」と話すのは、農民運動茨城県連合会(茨城農民連)の奥貫定男書記次長です。「生産者の高齢化により、作付面積も生産量も年々減っています」。
農林水産省の報告書によると、茨城県の基幹的農業従事者(ふだん仕事として主に自営農業に従事している人)は、2000年の10万3715人から20年には5万7496人に減り、中心世代の40~64歳で見ると4万7495人が1万4406人へと7割減少しました。
「亡国の農政」
生産者減少の背景には、長年の自民党政治による輸入促進策と農業切り捨てという「亡国の農政」があります。1961年に旧農業基本法が制定されて以降、国内の生産量を維持、増産するよりも、安い農産物を輸入する、という政策を国が進めてきました。
「外食産業や加工業が輸入依存になる中、この夏のような異常気象のときには、生産量の減少がすぐに価格に反映することになります」と奥貫さんは話します。
奥貫さんは、農家に対する所得補償を政府に求めたいといいます。「農産物は天候の影響を大きく受けます。燃油代など種々の経費も上がっている中で、安心して生産できるようにならないと農業をやめる人はいっそう増えるでしょう」。
前出の女性の周囲の農家でも、耕作できなくなり生産を他の人に頼む家が増えているといいます。「自民党のやり方ではダメだとハッキリしています。食料自給率を一番に考えることが必要です」。
安定した国内生産のためにも、輸入を拡大してきたことへの反省が必要だと奥貫さんは強調します。「農業は生産者だけの問題ではありません。学校給食などの公共調達も切り口に、消費者も含めた国民的な運動にしていきたい」。
前出の女性は語ります。「喜びはいい野菜をたくさんつくること。それが適正価格で売れれば、こんなに楽しいことはありません」。
(「しんぶん赤旗」2023年9月23日付より転載)