布川事件 二審も賠償命令 検察の不法も断罪 原告「胸すく判決」 東京高裁
茨城県利根町布川で1967年に起きた強盗殺人の「布川事件」の犯人とされ、再審無罪が確定した桜井昌司さん(74)が、国・茨城県に損害賠償を求めた裁判で、東京高裁(村上正敏裁判長)は8月27日、警察と検察が違法な取り調べを行う「共同の不法行為」があったとして、約7,400万円の賠償を命じました。
「当たり前のことに50年も…」
判決は、警察の取り調べでの桜井さんと杉山卓男さん(2015年死去)の自白は、「いずれも虚偽のもの」と強調しました。
虚偽の自白をとる上で、取り調べの警察官が「『やったことは仕方がないから早く素直に話せ』と母親がいっている」とねつ造した話をしたり、ポリグラフ検査で桜井さんの供述がすべてウソだと判明したと話したことをあげ、「心理的動揺の下、虚偽の自白をしたものと推認される」と指摘。
「このような警察官の取り調べが、社会的正当性を逸脱して自白を強要する違法な行為であることは明らか」と断罪しました。
また、一審の東京地裁判決で違法性が認められなかった検察の取り調べについても、今回の判決は「検察官が自己の意図に従った調書を作成するため、否認を許さない強い態度で取り調べを行い自白を強要した」と違法性を認めました。
こうした警察・検察に強要された虚偽の自白が無ければ、逮捕や起訴、有罪判決を受け服役することもなかったとして警察と検察の「共同の不法行為」と断罪しました。
閉廷後、弁護団長の谷萩陽一弁護士は、「全面勝利判決といっていい、桜井さんと杉山さんが言い続けてきたことをいってくれた判決だ」と評価しました。
桜井さんは、「今日の判決ほど胸がすく判決はなかった。私と杉山が54年前にされた事実をそのまま認めてもらった。当たり前のことが当たり前と認めてもらうのに50年もかかるのはすごいことだ」と語りました。
全国のえん罪被害者らと、えん罪根絶の活動を続けてきた桜井さん。検察の証拠開示義務や取り調べの全面可視化などの必要性を強調し、「えん罪を生まずに済むシステムを作りたい」、「道理が通る国にするために力を貸してほしい」と呼びかけました。
昨年2月に余命宣告を受けた桜井さんは、「これからもみなさんの期待に応える生き方をしていきたい。それをもってお礼にしていきたい」と語りました。
弁護団は、「上告等をすることなく、判決に従って責任を認め、桜井さんに真摯(しんし)に謝罪すべき」だとする声明をだしました。
(「しんぶん赤旗」2021年8月28日付より転載)