もの言う議員「懲罰」違法 茨城・古河市に賠償命令 多数会派の乱用断罪 水戸地裁支部

ウクライナ決議で党市議に出席停止 「発言の自由重要 処分重過ぎ」

市議会でロシアのウクライナ侵略を非難する決議を呼びかけたら出席停止に─。茨城県の古河市議会(定数24)で、多数会派による物言う議員への「懲罰」は違法だとして日本共産党の秋庭繁市議(76)らが古河市に損害賠償を求めた裁判の判決で、水戸地裁下妻支部(渡辺力裁判長)は市に計77万円の賠償を命じました。

(矢野昌弘)

勝訴したのは、秋庭市議と「市民ベースの会」の増田悟市議(77)です。どちらも針谷力市長と業者との海外旅行疑惑など、市政のなれ合いを追及してきました。

秋庭さんは、2022年3月の定例会の討論冒頭で、ウクライナ侵略を非難する決議を呼びかけました。字数にして300字ほどの発言が「議会の品位、権威をおとしめ」たとして出席停止5日の懲罰を受けました。

増田さんは、20年に「疑惑の4日間」と題したビラを地域に配布したことで4日間の出席停止の懲罰を受けました。ビラの内容は、針谷市長が業者と海外旅行に行ったのではないかという市議会での増田さんの発言を掲載したもの。発言後に再調査が必要なため撤回した部分をビラに掲載していました。

動議者が委員に

2人への懲罰は、乱暴な手続きで進められました。

懲罰の動議を出した自民党、公明党、幸福実現党の各会派の議員10人が、そのまま懲罰特別委員会の委員10人に横すべり。増田さんが所属する「市民ベースの会」には当時、6人の市議がいました。会派ごとに懲罰特別委員会の委員を割り振れば、3人に1人の市議が選ばれる計算です。しかし、「市民ベースの会」から1人も委員に選ばれることはなく、2人への懲罰は強行されました。

秋庭さん、増田さんは22年12月に「理由にならない理由で不当な懲罰を受けた。一部有力議員による恣意的な議会運営を問いたい」と提訴。渡辺裁判長は10月23日の判決で、懲罰はいずれも違法としました。

渡辺裁判長は、増田さんについては「チラシの配布は個人的な政治活動にすぎない」と指摘。「議会の秩序が維持されなくなったり、その運営が円滑に進まなくなったりするような具体的な危険が発生するといった事情があるとは到底認められない」としました。

秋庭さんの決議呼びかけに関しては、「議会における議員の発言の自由の重要性をかんがみると、出席停止処分は重きに過ぎた」と批判しました。

また、判決は懲罰の動議を出した議員と特別委員会の委員が同じだったことに言及。「委員会の結論が動議の内容と異なるものとなるとは考えがたい」と付言しました。古河市に秋庭さんへ22万円、増田さんへ55万円の賠償を命じました。

スマホ注意でも

古河市議会では、自民党会派の有力議員が議会中にスマートフォンを見ていたことを注意した「市民ベースの会」の長浜音一市議(当時)が懲罰を受けた問題で、水戸地裁下妻支部で係争中です。

秋庭さんは、「今回の判決で、議会内での自由な発言とは何かが改めて確認された。しかし、懲罰を強行した自、公、幸福実現の会派9人は判決を受け入れようとしていない。この判決を市民に知らせて議会改革に力を入れ、活発な市議会にしたい」と語りました。

(「しんぶん赤旗」2024年11月5日付より転載)

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