クローズアップ 茨城・那珂 下大賀遺跡 かまどの神様? 全国初の発見 石製支脚に人物画

茨城県那珂市にある下大賀遺跡で出土したかまどで使う石製の支脚に、人の形が刻まれていたことが分かりました。発掘調査を手掛ける県教育財団が先月、発表したもの。財団によると人物画が刻まれた支脚の発掘は全国で3例目。石製では全国初です。

(茨城県・高橋誠一郎)

水戸市から車で30分ほど、久慈川支流の玉川右岸・標高44メートルの台地にある那珂市北部の下大賀遺跡では、縄文前期(約6,500年前)から平安時代の竪穴住居跡が多数確認されています。出土した支脚は2013年度の調査時に平安時代(9世紀中頃)の竪穴住居跡から見つかったもので、今年度にクリーニング作業を行った際、人物画を見つけました。

石製支脚は長さ26センチ、幅9センチ、厚さ7センチの凝灰岩質。強飯(=蒸した米)を作る際、甑と呼ばれる土器と、湯を沸かす甕を支えていました。表面に顔と胴体、片側面には顔が刻まれ、人物画が逆さまの状態で出土しました。

財団によると、石製以外の支脚では千葉県酒々井町の飯積原山遺跡(02年)、埼玉県深谷市の幡羅遺跡(06年)で、いずれも土製のものが見つかっています。

●延命を祈願

県教育財団埋文企画管理課の樫村宣行・埋蔵文化財指導員は、「衣のようなものをまとい、後光が差している様子から神か仏と推定している」と指摘。「竈神信仰の表れではないか」と話します。

古代中国では、かまど神が家族の罪過を天帝に知らせて人間の寿命を縮めると伝えられ、5世紀ごろにかまどが朝鮮半島から日本に流入したのにあわせてかまど神信仰も伝来しました。樫村さんは、「悪行が煙に乗って伝わると恐れられた。延命を祈願してのものだ」と説明し、石製支脚の人物画が下を向いていたのも、「わざと逆さまにして神が天に昇らないようにしたのではないか」と推測。

解体後の煙道にふたをするなど、かまど神信仰を思わせる跡が千葉県などで見つかっている点にも触れ、「これから同様の事例が見つかれば、民俗学の視点からも祭祀の研究が深まる」と話します。

●特別展開催

県教育財団は1日から26日まで、桜川市の真壁伝承館・歴史資料館で「発掘!!いばらき2022 茨城県教育財団調査遺跡紹介展」を開催。今回発掘された石製支脚をはじめ、自然資源を利用した縄文人の生活文化が垣間見える上境旭台貝塚(つくば市)などの出土品122点の土器・石器類を展示。19日には金沢大学の佐々木由香・特任准教授が縄文時代の植物資源利用について講演します。いずれも無料。

問い合わせは茨城県教育財団埋文企画管理課=029(225)6587まで。

(「しんぶん赤旗」2023年2月2日付より転載)

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