原電L3廃棄物埋設の問題点Q&A 「1兆7千億ベクレルを素掘りの穴に放り込む!」という、とんでもない計画
原電L3廃棄物埋設の問題点Q&A 「1兆7千億ベクレルを素掘りの穴に放り込む!」という、とんでもない計画
2015年9月 日本共産党茨城県委員会
☆原電がパンフレット「東海発電所の廃止措置で発生する放射能レベルの極めて低いL3廃棄物の埋設について」を改変したことについての補足説明
日本原電は7月、東海原発の原子炉(1号炉)の解体で発生した放射性廃棄物(コンクリートや金属類)を敷地内に埋設するという計画を、原子力規制委員会に提出しました。
廃棄物は、約16,000トン。放射性濃度は1兆7千億ベクレルに上るすさまじい量です。
それを、素掘りの穴の中に入れて土を被せるだけ。
最初から放射性物質が地下に漏れ出す事を前提にした埋設方法です。
自然環境と人間などの生物に大きな害を及ぼす、こんな無謀な計画は許されません。
その埋設計画とは、どのようなものでしょうか。
- Q1…L3(レベル3)廃棄物ってなんですか?
- A1…停止した原発を解体することによって発生する廃棄物を放射能汚染度によって分類し、レベルの高い物から、L1、L2、L3と称しています。
●L1:放射能レベル極めて高い炉内構造物=制御棒等
●L2:(L1とL3の中間レベル)廃液の均質固化体等
●L3:放射能レベルの極めて低いコンクリート、金属等
使用済み核燃料(人間が近付いただけで即死)は、L1より更に高レベルで3つとは別格です。
- Q2…そのL3埋設計画ってなんですか?
- A2…1998年に運転を停止し、解体作業中の東海原発のL3廃棄物を原電原発の敷地内に「トレンチ処分し50年間管理する」と言います。「トレンチ」とは、「溝」のことですから、地面に溝を掘って埋めるということです。そして、50年間は地下水を監視するが、その後は野放し・・・ということになります。
- Q3…L3は「極めて低い放射能レベル」なら、別に問題ないのでは?
- A3…「極めて低い」と言うのは、「極めて高い」と比較してのことであって、人間などの動物や生物、環境にとっては、健康に重大な影響を及ぼします。決して「低い」などとは言えません。
- Q4…L3は具体的にはどれ程のレベルなのですか?
- A4…国が定めている「核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則」によると、コバルト60、ストロンチウム90、セシウム137だけに限って上限値が示され、セシウム137の場合は、濃度が上限10万ベクレル/kg(以下Bq/kgと記す)と規定されています。
- Q5…実際に埋め立てようとしている物の放射能はどれ程のレベルなのですか?
- A5…「原電東海 L3廃棄物核種毎の量一覧表」(資料1)に示します。原電発表の数値を基にしたものですが、合計すると1兆7千億ベクレルに達します。
福島第一原発事故によって県内に降り注いだのは、基本的にはヨウ素とセシウムだけですが、L3廃棄物には、それ以上に危険な物質も含まれています。(A8で詳細説明)
- Q6…「指定廃棄物」というのは良く聞きますが、どんな物ですか。
- A6…「指定廃棄物」は、下水道処理で発生した汚泥などの廃棄物ですが、福島第一原発の事故によって福島県と近県に降り注いだ放射能を含んだものです。セシウム134と137の合計で8,000~10万Bq/kgの物を、国が「指定」して、各県に1箇所ずつ「遮断型の処分場を建設して管理」することになっています。茨城県では、2013年、候補地となった高萩市で市民の反対を受けて頓挫し、苦し紛れ的に「現状の保管場所で厳重に保管」という方向になりつつありますが、どうすれば「厳重に保管」できるのか、解決できていません。栃木県、千葉県、宮城県では大きな反対運動が続いています。
指定廃棄物に含まれるセシウムの総ベクレル量は公表されていませんので推算で出すしかありませんが、重量/ベクレル総量は、茨城県の場合、3600トン/600億Bq*と推定されます。*エコフロンティアかさまを監視する市民の会の推算値
指定廃棄物は、原電のL3廃棄物(16,000トン/1兆7千億ベクレル)と比較すれば低いのですが、環境省は、「(危険物質として)遮断型処分場で長期間にわたって管理が必要」と言っています。
8,000Bq/kg未満の物については、特措法によって既存の管理型処分場(遮水シートがあるタイプの処分場)への埋設が認められてしまいました。どさくさ紛れ的な措置で、問題があります。 - Q7…「指定廃棄物の遮断型処分場」とは、どんな施設ですか?
- A7…環境省は、「分厚いコンクリートの壁の中に廃棄物を閉じ込め、四方から雨水が入りこまない構造として、監視者が内部に入って保管状態を目視できる施設」と言っています。(資料2参照)
それでも、栃木県では水源地に近いため、「コンクリートの劣化や地震などで壊れたらどうなる」という心配は当然です。因みに、栃木県のどこに作られようが、漏れ出せば、茨城県内を流れる河川(那珂川か鬼怒川を経て利根川)に流れ込みます。
- Q8…原電は、「指定廃棄物のセシウム濃度は8,000Bq/kg以上。L3廃棄物は7,000Bq/kg以下」と、言っていますが。(原電発行パンフレットの5ページ目・・・資料4)
- A8…セシウムの濃度だけを単純比較して、あたかもL3廃棄物が指定廃棄物よりも危険性が低いかのようにするのは、欺瞞的と言わなければなりません。埋め立てる放射性物質の核種とベクレル総量こそが最大の問題です。実際に埋設する廃棄物のセシウム濃度の最高値が、7,000Bq/kg以下に収まるという保証もありません。解体によって発生する廃棄物が12,300トンと想定しているにも関らず、解体して保管中のものは400トンのみで、ほとんどの廃棄物は原子炉の内部に残されたままですから、濃度の測定はできていません。
L3廃棄物には、体内に摂り込んだら骨に蓄積するというストロンチウム90など、セシウム以上に危険な物質も含まれ、それ以上に危険な毒物=プルトニウムが存在する可能性も否定できません。埋設する廃棄物の総量、含まれる放射性物質のベクレル総量からみても、格段に危険性の高いものであることは明らかです。(A6参照)
- Q9…原電は、「指定廃棄物は水に溶け易い灰、燃え殻、汚泥が対象(だから頑丈な構造物に保管)。L3廃棄物は金属、コンクリートで、水を通して環境に出ない」(から心配ない)かのように言っているようですが。
- A9…たしかに、粉状の灰等のほうが水に溶け出しやすいことは明らかでしょう。しかし、金属は腐食し、コンクリートも劣化によって、雨水が内部に浸透し、外に出てくることは自明です。比較的短時間に溶け出すか、緩慢に溶け出すかの違いだけです。東海原発は建設後50年経っていますから、金属もコンクリートも既に劣化が進んでいる状態と考えられます。
2003年に発生した神栖町(現神栖市)の有機ヒ素汚染事件では、コンクリートの塊の中に含まれていた有機ヒ素化合物が井戸水に混入して、住民の健康に大きな被害をもたらしたことが明らかにされています。
- Q10…原電は、「鉄の箱や、プラスチックの容器に入れて埋める」と言っているようですが。
- A10…鉄もプラスチックも土中で何十年も持つ訳がありません。原電自身が、「容器に収納するのは、主に廃棄物を埋設地まで輸送・定置したりする際に放射性物質が環境中に飛散することを防止することを防止するためであり、埋設後に放射性物質を閉じ込める事を目的とするものではない」(日本共産党茨城北部地区委員会への回答書=2015年3月20日)とし、「破れても全然結構ですという前提」(8月6日の東海村議会原子力問題調査特別委員会)とまで言い切っています。
指定廃棄物よりはるかに大量で危険性が高い放射性廃棄物を、漏れ出すことを前提で素掘りの穴に埋設するなどというのは到底許されることではありません。
- Q11…原電は、「(廃棄物の核種毎一覧表から)単純にベクレルの合計を出しても、半減期が違うのだから意味がない」と言っているようですが。
- A11…原電は、「埋めた後に1年間に全量が出る(物がある)」(8月6日の東海村議会原子力問題調査特別委員会)として、「50年後の総ベクレルがいくらになるかという数値をだすのは意味がない」と言わんばかりの説明をしています。
原電はそう言うのであれば、少なくとも百年先まで1年単位に総ベクレル量がどう変化するのか、流出てしまう分も想定した上での試算データを示す責任があります。そうしなければ、「50年管理で良し」とする根拠も説明できないはずです。
- Q12…原電は「地下水に入っても、地下水は全部太平洋に向かって流れ出るから問題ない」かのように言っていますが。
- A12…(1)原電は、「(地下水も)高いほうから低いほうに流れるだけ(逆はあり得ない)」「(付近の)水田に流れる事は想定していない」(8月6日の東海村議会原子力問題調査特別委員会)かのように言っていますが、地上における水の流れとは違い、地下水は、非常に複雑な流れをとることが知られています。
(2)「太平洋に流れ出る量は人体に影響を与えるレベルではない」という言い分に科学的根拠はありません。
福島第一原発事故によって、茨城県沿岸の海底土の放射性セシウム合計は、過去最大で960Bq/kg、現在でも最大120Bq/kg(茨城県東海地区環境放射線監視委員会 2015年8月17日発表)となっています。しかも、トラブルによって汚染水が海に流出することに加え、トリチウムを大量に含む汚染水の意図的な放流が開始されようとしています。すぐに茨城県沿岸にも流れ着く事は自明です。
茨城県の水産業にとってまさにダブルパンチ。実害、風評被害の両面で深刻な打撃を与える事になります。言うまでもなく太平洋は日本だけのものではありません。日本の一企業が身勝手に太平洋を汚染する事は許されません。国際的な批判を浴びることにもなるでしょう。
- Q13…原電は、「原子力機構の研究用実験炉JPDRのL3廃棄物埋設実験で安全は実証済」と言っていますが。
- A13…(1)JPDRの場合、「廃棄物はコンクリートだけだった」と言う事が明らかにされています。金属類は含まれていません。「コンクリートと金属を埋設」という原電の計画とは、前提条件がまったく異なります。しかも、JPDRは、「実験」は1996年の埋立完了時からほぼ2年間だけで終了しています。放射能消滅まで百年以上も必要なのに、2年間だけの「実験」で、「安全性を実証できた」と言うのは、とんでもない事です。
(2)埋設量は、JPDRは1,670トン。原電はその10倍の約16,000トンですから、規模的に見ても比べものになりません。
- Q14…原電は「埋設の規制制度が改正され、政府の『基準』が明確になった」と言っていますが。
- A14…基準作成にあたっては、JPDRの実験がベースになっていますが、たった2年間の実験だったというのでは、「基準」そのものが信頼に値するものでないことは明らかです。
- Q15…商業用発電炉のL3廃棄物埋め立ては、東海原発が最初ということですが。
- A15…廃炉が決まり、L3廃棄物については「当面敷地内保管」と言っている中部電力浜岡1,2号炉などが後に続くことになります。東海原発で「素堀り埋設」を許してしまったら、日本全国の廃炉原発が「右ならえ」で追随することになるでしょう。
- Q16…この問題について、日本共産党はどうすべきと考えているのですか。
- A16…原電が申請したL3処分方法は、「もうからないところにはカネをかけない」・・・という考え方から来ているに過ぎません。利益のために、安全を犠牲にするという考え方は、到底許されるものではありません。
原発を再稼働させれば、放射性廃棄物が増え、処理はいっそう困難になります。再稼働は断念し、そのうえで安全な処理方法について英知を集めて検討すべきです。その際、日本学術会議が提案し、私たちも原電に申し入れた、次のような「一時保管」という考え方が重要と考えています。
(1)管理に当たっては、場所が明確な表示等により後世に渡って一目でその内容が分かるものとすること。また、立ち入り確認ができる施設の構造及びその場所とすること。
(2)管理状況の確認は、「一時保管」の考え方により、毎日、実施すること。
(3)雨水・海水等の浸水対策、地震・突風・竜巻等への対策を十分行った遮断型構造による施設を整備し、厳重に管理すること。
(補足説明)
原電が、パンフレット「東海発電所の廃止措置で発生する放射能レベルの極めて低いL3廃棄物の埋設について」を改変したことについて
原電は、7月末にWebサイトに掲載した、「東海発電所の廃止措置で発生する放射能レベルの極めて低いL3廃棄物の埋設について」を9月初めに、その一部を改変しました。
5頁の「指定廃棄物とL3廃棄物の違いを教えてください」との設問において、
【改変前】は、「指定廃棄物は福島第一原発事故で発生した焼却灰や汚泥。セシウム134と137の濃度は8,000ベクレル/kg(以下Bq/kgと略)以上。L3廃棄物は発電所で発生する、放射能レベルが極めて低く、十分に安全性を確保できる金属やコンクリート7,000Bq/kg以下」としていました。
【改変後】は、セシウム137に加えて、コバルト60やストロンチウム90もあることが明記され(実際には、これ以外にもある)、「人体への影響として、指定廃棄物、L3廃棄物いずれの場合でも0.01ミリシーベルト/年以下」と言う文言を加えています。
まず、放射性物質の総量を抜きにして、放射能濃度だけで人体への影響がないかのように言う事には根拠がありません。「薄めればよい」ということになってしまいます。
なぜ、この部分を改変したのでしょうか。
原電は8月6日に開かれた東海村議会原理力問題調査特別委員会で「指定廃棄物がセシウムだけというのは、国の指定廃棄物の放射性物質がセシウム134と137だけしか示されていない。よって、他の放射性物質と比較できない」と説明しました。
しかし、「国が示していない」と言うよりは、指定廃棄物には、ストロンチウムなどは極微量あったとしても、基本的にはセシウムだけです。しかしL3廃棄物には、ストロンチウムなど他の核種もかなり含まれています。人体への影響が少ないと強調していますが、その根拠は示されていません。そもそも、原電は「L3のセシウムが7,000Bq/kg以下」としていますが、今後の解体作業で発生する廃棄物大量に残されているのに、解体前に、放射能濃度をきっちり測定できるのでしょうか。
環境省が「厳重に保管」としている指定廃棄物。原電はこれと比べて、「L3廃棄物のほうが危険度がはるかに小さい」かのように主張して、素掘りの穴への埋設を強行しようとしています。
【資料】
- 資料1…原電東海L3廃棄物核種毎の量一覧表(Q5の図をご参照ください)
- 資料2…環境省「最終処分場等の構造・維持管理による安全性の確保について (平成25年4月12日)」
環境省が茨城県の市町村長に提示した指定廃棄物処分場の詳細説明資料
http://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_other/ibaraki_gunma/pdf/conference_ibaraki_01_04_01.pdf - 資料3…原電「第二種廃棄物埋設事業許可申請書の概要」
http://www.japc.co.jp/news/press/2015/pdf/270716.pdf - 資料4…「東海発電所の廃止措置で発生する放射能レベルの極めて低いL3廃棄物の埋設について」(日本原電発行パンフレット/2015年9月)
http://www.japc.co.jp/haishi/pdf/150909.pdf
原電L3廃棄物埋設の問題点Q&A(PDF)