JCO臨界事故が起きて9月30年で10年。労組や民主団体などでつくる集会実行委員会は10月3日、東海村で「JCO臨界事故を忘れない、原子力事故をくりかえさない2009年9・30茨城集会」を開き、約百名が参加しました。
田村武夫実行委員長は、「JCO臨界事故を風化させてはならない」と強調し、集会実行委員会が取り組んだ住民アンケートの結果を報告しました。臨界事故から10年経って「恐怖が今も残っている」と答えた人は13%、「何らかのきっかけで思い出す」は66%と、年代が高くなるほど事故を思い出す割合が高くなっています。原子力災害の防止策・災害対策について「十分とられている」は2・2%で、4割の人は「ほとんどとられていない」と答えています。
健康被害裁判をたたかっている同村の大泉恵子さんは、「臨界事故をおこしたウラン加工工場を認可した国は責任をとっていない」と訴えました。
集会は、「プルサーマル計画」「原発の老朽化」「耐震安全」の3テーマでシンポジウムを開きました。
プルサーマル計画
「ウラン資源の有効利用」とはいえない
日本原子力発電(原電)が東海第二原発で計画しているプルサーマル計画について 岩井孝氏(日本科学者会議)は、「ウラン資源の有効利用」などとは言えず、「なんのメリットもない。安全上の問題が大きく、やる必要もないし、やらない方がいい」と強調しました。
プルサーマル計画は、原発の使用済み核燃料を再処理して抽出したプルトニウムをウランとの混合酸化物燃料(MOX燃料)にして再び原発で燃やす計画です。岩井氏は、プルサーマル後の使用済み核燃料はプルトニウムの質が非常に低下し、リサイクルとして2回目使用されることはないと指摘しました。さらに、政府や電力会社が「プルサーマルには実績がある」とのべていることについて、日本のMOX燃料に含まれるプルトニウム含有量は最大で13%と諸外国に比べ2割から4割高いと説明。「これまで実績があるのかどうか疑問だ。プルトニウムの高い濃度によるプルサーマルは日本が最初の実験になるかもしれない」と指摘しました。
東海第二原発でのプルサーマル計画については、日本原電は「地域のみなさんのご理解を得られるよう取り組んでいく」とのべており、「住民の合意がなければ何も始まらない」と強調しました。
原発の老朽化
60年想定の長期運転は無謀
原発の老朽化をテーマにして出井義男氏(日本科学者会議)が報告。出井氏は、原発の耐用年数について、アメリカには原発設置の際、最大40年運転の許可条件があるのにたいし、日本は13ヵ月以内に1回の定期検査に合格すれば永遠に運転できるしくみで、老朽化しても運転を継続するか停止するかは電力会社の判断に委ねられているとのべました。
老朽化のなかで原子炉圧力容器内部の炉心シュラウドのひび割れが、東海第二原発など多くの原発で確認され、安全確保の面から重大な課題だと指摘。検査は電力会社の自主検査に任せられており、これまでの検査方法ではチェックできない個所も多いと告発しました。
運転開始から30年を経過した東海第二原発が、60年の長期運転を想定し、10年ごとの「長期保全計画」を国に提出したことについて出井氏は、東海第二原発は炉心シュラウドのひび割れや定期検査間隔の長期化など老朽化が進行しており、長期の運転継続は無謀だと批判しました。
耐震安全
初の海域調査で無数の断層
中村敏夫氏(県原発を考える会)は、日本原電が行った東海第二原発周辺の海域調査で、北茨城から大洗までの沿岸部に無数の断層が見つかったことを報告しました。原電は国に提出した「中間報告書」で、古い断層なので「地震を発生させるような断層ではない」などと断定。国の審査会から「不適切で見直すこと」と指摘を受けていることを明らかにしました。中村氏は「東海原発周辺の海域調査は今回が初めてということは県も認めている。東海原発から50年ぐらい経つが、日本原電は一度も自分の手で海域調査をやってこなかった」と批判しました。
また、100キロ圏内の関東平野に活断層が認められたとして、原電は「複数の断層が連続して活動することを考慮」して、マグニチュード8の巨大地震を想定した見直しを行ったとのべました。
中村氏は、日本原電の対応には、東海第二原発の補強や改造をできるだけ避けようとする姿勢があり、運転開始後30年以上経っている原発の基準地震動の大幅変更、海底断層の無視など、柏崎刈羽原発被災の教訓を省みない体質があると指摘。巨大地震の想定や、海底断層の評価を含めた耐震安全性の見直しにふさわしい徹底的な対策を実施すべきだと強調しました。