2009年6月

八ッ場ダムの現地調査とダム建設の問題点

八ツ場ダムの現地調査に参加して 衆議院比例予定候補 田谷たけお

 5月9日、群馬県八ッ場ダムの日本共産党現地調査に参加してきました。全国でもトップクラスの無駄なダムの象徴であり、茨城県民の水問題を考えるためにも避けては通れない問題があるとの認識がありました
 当日、吾妻線の群馬原町駅に降りると、新緑がまばゆく光り、静かな温泉地の風情が漂っていました。こんな自然の豊かなところに必要のないダムをつくるのか、「百聞は一見にしかず」で現地を見ることの大事さを実感しました。
 調査団は塩川鉄也衆議院議員とあやべ澄子衆院比例候補、それに茨城、群馬、埼玉、栃木の北関東各県の県会議員・市町村議員など総勢28人の調査団となりました。茨城からの参加は私と山中たい子県会議員、橋本桂子つくば市議の3人でした。「八ッ場あしたの会」の事務局長が来賓として現地調査にも参加してあいさつしました。

日本一の事業

 八ッ場ダムは、利根川の洪水調節と首都圏の水需要に対応することを目的に、利根川支流の吾妻川に建設される多目的ダムです。堤高131メートル、総貯水量1億750万トン。建設主体は国交省ですが、利水・治水の便益を受けるとして東京、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬の1都5県にも巨額の負担をさせています。
 ダム湖の面積は316ヘクタール。340戸の世帯が水没します。このなかには800年の歴史をもつ川原湯温泉も含まれています。また、名勝・吾妻渓谷も3分の1が水没し、残りも大きな影響を受けてしまいます。
 計画は半世紀以上前にたてられ、地元の激しい反対闘争が起きましたが1986年に群馬県の仲介で水没住民が近隣に造成する代替地に移転する「現地ずり上がり方式」による生活再建案が合意をされました。
 04年に事業計画が変更され、総事業費4600億円の日本一の事業となり、また、07年に工期が5年延長されて2015年度末完成とされました。07年にはダム建設中止を求める運動と住民訴訟が起こり、「八ッ場あしたの会」が発足し、ダムなき後の地域再生についてのシンポジウムが2度にわたって開催され、中止を求める署名運動がすすめられています。また、6都県の超党派の議員が八ッ場ダムについて考える会を結成し、茨城をはじめ各議会で見直しを求める質問も活発におこなわれています。
 6都県それぞれで、八ッ場ダム参画の是非を問い提訴された住民訴訟も5年目を迎え、証人尋問などで利水・治水上の必要のなさ、ダムをつくることによって生じる危険性が詳細に明らかにされています。5月11日にははじめての判決が東京地裁で下りました。住民側の主張を認めないひどい判決でした。6月30日には水戸地裁で判決が予定されています。判決の傍聴参加が大事になっています。

ダムはつくる必要性がないだけでなく、災害誘発の危険性も

 八ッ場ダムはつくる必要性がないだけではなく災害を誘発する危険性が高い有害なダムです。その理由として
 (1)利水上の必要性は消失していること。6都県の上水道、工業用水の給水実績は90年代に横ばいから現象に転じ、00年以降は顕著な減少傾向となっており、各都県が保有する水源を合計すると過去の1日最大給水量と比較しても240万立方メートル以上の余裕があり、600万人の給水を余裕を持ってまかなえる量に匹敵している。
 (2)洪水対策としても必要性はないこと。利根川の治水計画は、1947年のカスリン台風の洪水をモデルとして、これを防ぐことを目標にたてられ、八ッ場ダムもこのなかに位置づけられている。しかし、カスリン台風の時の雨は八ッ場ダム予定地の下流域が雨の中心であり、治水効果は発揮できないこと。また、ダム予定地の吾妻渓谷は渓谷最狭部の川幅が極めて狭く、それが天然のダムの役割をはたしており、国交省はその効果を全く考慮していないこと。
 (3)災害を誘発するダムであること。ダム予定地は、当初は吾妻渓谷の狭隘部だったが、渓谷を破壊するとの声で600メートル以上上流に移された。しかし、この場所は以前国交省が「地盤が弱くダムには不向き」としていた場所である。実際、国交省の資料でも透水性の高い地層が分布し、もろい熱水変質帯の存在も明らかになっており、ダムサイト崩壊の危険もあることが地質学者らから指摘をされている。ことなどが指摘をされています。また、その他の問題も山積しており、このようなダムは中止する以外の選択はありません。

若山牧水が残した 一文

 「八ッ場あしたの会」のホームページには、いまから90年近く前に八ッ場をたずね、その風景に魅された詩人・若山牧水が残した一文が紹介されています。「私は、どうかこの渓間の林がいつまでもいつまでもこの寂びと深みとを湛えて永久に茂っていてくれることを心から祈るものである。ほんとに土地の有志家といはず、群馬県の当局者といはず、どうか私と同じ心でこのそう広大でもない森林のために永久の愛護者となってほしいものである。もしこの流れを挟んだ森林がなくなるようなことでもあれば、諸君が自慢しているこの渓谷は水が涸れたより悲惨なものになるに決まっているのだ。」(「静かなる旅を行きつつ」より1921年刊)
 現地調査に参加して、八ッ場ダム計画の即時中止とダム建設と切り離した生活再建が強く求められていることを痛感しました。そして茨城の水道料金にもかかわる大事な問題として運動を広げることが求められていることを痛感しました。

〔追記〕
資料として日本共産党群馬県委員会発行の「八ッ場ダム計画の即時中止とダムと切り離した生活再建を」を活用させていただきました。

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