2009年6月

介護保険で学習交流会

利用者制限ますますひどく

 

 

「通院介助は復活してほしい」

 介護保険制度が10年目を迎えました。4月からは要介護認定のしくみが変わり、介護保険料も改定されました。介護現場はどうなっているのか――日本共産党茨城県議団は5月20日、学習交流会を開きました。
 担当地域が10自治体に及ぶというケアマネジャーは、この間の改正で通院介助がきびしく制限され、利用者が通院できないでいる実態を報告しました。ある市の規定では、ヘルパーがお年寄りの通院に付き添って介助する場合、介護報酬の対象は病院窓口の手続きやトイレの時間だけで、待ち時間の見守りは求められていません。「通院は一回に3時間はかかる。しかし報酬対象は10分程度。これでは事業者はやっていけない」とのべ、介護報酬による通院介助を復活してほしいと訴えました。また、今年4月からの介護報酬の3%引き上げは、一定の条件を満たす事業所が中心で、介護労働者の処遇改善に結び付く保障はないと指摘しました。
 短期入所・通所介護施設の社会福祉士は、医療行為が伴う利用者が多くなり、夜間などは少ない職員での対応が困難になっていると報告しました。
 水戸市の田中真己市議は、第3期(2006年度から08年度)の同市の介護サービスの実績を報告。ホームヘルパーや訪問介護、訪問入浴などが計画の7、8割にとどまっている状況を示し、「06年度の制度改悪以降、介護度の軽い方のサービスを抑制してきたことによる」と指摘しました。また同市で実施している一人暮らしの高齢者を対象にした緊急通報システムの利用条件に、「病弱な一人暮らし」で、近くに「3名の協力員」が必要なことなど、きびしい制限を設けている実態を報告しました。
 山中たい子県議は、県内の介護保険の施行状況を報告。在宅サービスの利用状況は、支給限度額の42%(07年度)にとどまり、1割の利用料負担のなかで利用を控える状況がつづいていると指摘しました。

特養ホームの待機者約5千人

 特養ホームの待機者は08年3月末現在、4、777人に達しています。第4期(09年度から11年度)における65歳以上の保険料は一人当たり県平均3、717円(月額)、第3期より256円(7・4%)値上げされました。
 県実施の介護福祉士養成施設卒業者を対象としたアンケート調査では、「働き続けたい」が8割近くあり、山中県議は「福祉の志をもって働き続けたいという若い人を応援するのは政治の責任だ」と強調しました。

立場の違いこえた共同を


榛田敦行氏が講演

 講演した党中央政策委員会の榛田敦行氏は、今年2月に日本共産党が発表した「介護保険10年目を迎えるにあたっての提言」のポイントを報告しました。
 榛田氏は、深刻になっている介護現場の人材不足をあげ、制度存続にかかわる重大事態と指摘。一方でいざ介護が必要になっても十分な介護が受けられないという怒りの声が広がっていることをあげ、「立場の違いをこえ、危機の打開をめざして力をあわせるとき。その立場から提言を発表し、協力・共同をよびかけている」とのべました。
 「提言」の柱の一つめは保険料・利用料の減免です。低所得者への減額・免除のしくみの創設を打ち出しています。二つめは「介護とりあげ」の是正です。現行の要介護認定制度を廃止し、現場の専門家の判断を尊重することなどを提起しています。三つめは、介護労働者の労働条件の改善です。公費投入による賃金の月3万円アップなどを訴えています。四つめは、介護保険だけで解決できない高齢者の問題に自治体が責任をもって取り組むことを求めています。そのために現在22・8%まで下げられている国庫負担割合を計画的に50%に増やすことを求めています。
 榛田氏は、介護保険を推進してきた専門家からも、低所得者を排除しないしくみを求める声があがっていることなどを紹介し、改善を政府に迫っていく「新たな共同と運動の条件が広がっている」と強調しました。

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