2009年4月

「カジノ資本主義の破綻と日本のあり方」シンポジウム

茨城革新懇が開催

報告する大門参議院議員、左は今宮中央大学名誉教授

パネリストに今宮謙二中央大学名誉教授、大門実紀史参議院議員

 2月15日、茨城革新懇が土浦市亀城プラザでパネリストに今宮謙二中央大学名誉教授、大門実紀史参議院議員を招き、「カジノ資本主義の破綻と日本のあり方」をテーマにシンポジウムを開きました。
 今宮氏は国際金融論が専門で、大銀行に勤務して取引の現場も経験しています。大門議員は構造改革論をめぐって竹中平蔵氏と国会で論戦を交わしたことで有名です。以下パネリストの報告を要約して掲載します

  【文責・編集委員会】

〔今宮謙二中央大学名誉教授の報告から〕

オバマは世界の難問に応えることができるか

  今、資本主義が限界に至るだけでなく、人間社会の存在の条件が打撃を受けている。世界情勢は大きく変わっている。アメリカの一極支配は終わり、オバマ大統領が誕生したが、アメリカが本当に回復できるのか、オバマは大変な難問を抱えている。解決できるかどうか、みな疑心暗鬼で見守っている。経済閣僚を見ても、サマーズ国家経済会議委員長は第2次クリントン時代の財務長官、経済顧問のルービンは第一次クリントン政権の財務長官で元ゴールドマンサックスの会長でのちにシティグループの会長にもなった人物。ともに新自由主義政策を推進してきた。はたして新大統領が世界の抱える問題に応えることができるのか。オバマ大統領はマーケットに対して玉虫色で、投機マネーの規制については曖昧。
 オバマが勝った理由の一つは、莫大な政治献金を集めたこと。3分の1は庶民の献金だが、3分の2は大手企業の献金。草の根の運動でオバマをサポートしてきた人々はわれわれが頑張らなければチェンジできないと言っている。

今回の経済危機をどうとらえるか

 今回の経済危機を100年に一度というが、それは間違っていない。この危機は、同時に世界情勢が大きく関わっている。困難と同時に、大きな危機をどう乗り越えかで世界を大きく変えていくことができる。その流れに沿っていくことが大事。100年に一度というのは、FRB(アメリカ連邦制度準備理事会)議長であったグリーンスパンが言い出したこと。彼は一九八七年から2006年まで議長をつとめ、投機マネーの暴走を推し進めた張本人。100年に一度の大津波といったのが本当で、天災であるかのように言っていたが、議会でようやく一部の責任を認めた。

金融と経済の二つの角度から

 この危機は金融と経済の二つの角度から見る必要がある。
 金融の面からいえば、国際的な金融危機。株安、金融市場の麻痺、金融機関の倒産、アメリカでは五つの投資銀行すべてが姿を消した。ゴールドマンサックスは早く売りぬけて、モルガンスタンレーと共に商業銀行となった。リーマンは倒産。ベアスターンズ、メリルリンチは吸収された。新自由主義時代の危機は80年代から3回あるが、最も激しい危機。
 ドルの基軸通貨の地位に打撃を与えている。基軸通貨は第二次大戦後ポンドからドルになった。その時、イギリスはケインズを代表として抵抗したが、イギリスは大戦で負債を抱え、アメリカの金に買い取られた。当時世界の金の七割をアメリカが持っていた。1971年にドル危機が起こり、ニクソン大統領は金とドルの交換を停止して変動相場制に移行した。しかし、その後アメリカは投機マネーを利用して、基軸通貨の地位を安定化させた。赤字で垂れ流すドルを投機マネーでニューヨークに集め、それをさらに世界に投資してきた。
 今回はその投機マネーそのものがおかしくなった。しかし、ドルに代わることのできる通貨がない。
 経済の面では、ひとつが世界的な過剰生産恐慌。自動車ではビックスリーの存亡が問題となっているが、機械、半導体など製造業全体におよんでいる。住宅バブルも崩壊した。アメリカの一人勝ちといわれた時代、情報産業・ITがバブルとなったが、2001年に崩壊した。ワールドコムやエンロンのような不祥事がおこった。それからITの代わりに住宅価格が上昇し、住宅バブルが起こった。アメリカの場合、住宅価格で金を貸してくれるので、住宅ローンがあっても、価格が上がった分だけ借りられる。それで家計消費が大きく上がって、世界から物を買った。それが、バブルの崩壊で一気に冷え込んだ。世界が4〜5%の伸びを予測して生産規模を拡大していたので、それが大きく外れた。

資本主義の基本を壊した新自由主義

 これからは、地球温暖化の問題と関連して、世界の経済構造を転換しなければならない。資源浪費からの決別が必要になっている。
 投機マネーは人間の存在条件を破壊している。資本主義は労働、資本、技術の3つの要因で発展してきたが、新自由主義では労働をコスト扱い、物あつかいして、竹中平蔵氏のように使い捨てを広言している。
 新自由主義の元祖であるマーシャルは貧困をなくしたいと経済学を学び始めた。儲けは最低限を確保し、あとは労働者の賃金を上げ、それでも余ったら配当に回し、次に商品の価格を下げるべきだと言っていた。今は社会がゆがんでいる。労働賃金は購買力の元でもある。それをもの扱いしたら、ものづくりの基本を壊し、お金の流れもおかしくする。

資本主義の限界を乗り越える社会に

 大企業が内部留保でためこんでいても何にもならない。大企業支配のもとでは、投機資本主義は必然的。資本主義には、根本的に解決できない恐慌、貧困、投機などの問題がある。環境問題も資本主義のもとでは根本的に解決できない。人間尊重、貧富の格差是正、市場の歪みをただす、地球環境を守るルールをつくる、こういう資本主義の改革を通して、違う社会、資本主義の限界をのりこえる社会にたどりついていくのではないか。

〔大門実紀史参院議員の報告から〕

新自由主義の破綻と自民党政治の行き詰まり

 新自由主義の竹中平蔵氏や財界は多国籍企業の国際競争力をつけるのが第一で、そうすればほかに回ると言ってきたが、破たんして方向転換できなくている。
 自民党政治の行き詰まりを2段階で見ると、角栄型のバラマキ政治が行き詰った。最後が小渕内閣、借金王だと自分で言っていた。小泉内閣になって、竹中氏が新自由主義の「構造改革」の路線を立てた。資本の論理だけ野放しでいい、足かせを取っ払う、資本主義は最高のシステムという考え。大企業の競争力をつける、そのために、人件費、税・社会保障負担を減らす。人件費を減らすために非正規・派遣などを拡大した。税負担を軽減するために法人税の減税。社会保障負担を軽減するために、医療費を抑える、そのために@窓口負担増A保険外診療の拡大B高齢者医療制度をすすめた。安倍内閣になって、今度は憲法改正をテーマにしたが、参議院選挙までには、くらしをどうしてくれるんだとなって、自民党は大敗した。
 いま、国民が一番大変な時に大金持ちの麻生首相が何でやるのか、自民党には人がいない。いま、二大政党論も崩壊してきて保守再編という話も出ている。大きな連立与党で消費税増税と憲法改正、財界好みの経済改革をやろうというもくろみだ。しかし、国民は土台を批判している。憲法改悪、構造改革をやめろと言っている。選挙後に連立などというのなら、選挙前にはっきリさせて国民の審判を受けるべきだ。
 投機マネーは200兆ドルといわれ、それが世界を回って、石油、食糧、サブプライムでバブルをつくってきた。なぜ余ったのか、それは新自由主義で奪ったお金だ。

投機マネーの規制は、世界の常識に

 9月にテレビに出たときには、私が投機マネーの規制と言っても、投機も必要などという意見が出ていたが、10月に出た時には私・大門の発言が議論の基調になった。今や、投機マネーの規制は世界の常識になっている。






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